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Polymerase chain reaction
科学系の教科書を読んでいるとその所々で「ちょっと一息」や「コーヒーブレーク」として豆知識が書いてあったりします。あれ憧れだったのでちょっとやってみます。
タイトルが何か格好いいことになっていますが、これはPCRの正式名称です。直訳するとポリメラーゼ連鎖反応。現在、新型コロナウイルス検査で使われている方法です。
セントラルドグマという言葉を聞いたことはあるでしょうか。『新世紀エヴァンゲリオン』をご存知の方はぴんと来るかもしれません。
これは分子生物学の用語です。遺伝子から生体を作るたんぱく質を生成するまでの流れを示しています。具体的に言うとDNAをRNAに転写、それを整えて翻訳しアミノ酸を繋げる。
この流れは料理本に例えられることもあります。持ち出せないほど大きな料理本から必要な箇所をメモに書き取り、それを必要なところだけ箇条書きにして、そのメモを基に料理をする。そういう感じ。
このメモを取るところ、「転写」という作業をするのがRNAポリメラーゼという酵素です。
RNAって急に出てきたけど何だよ、という方のために説明しますと、これも遺伝子です。DNAはデオキシリボ核酸の省略名で、RNAはリボ核酸の省略名。“デオキシ”は酸素原子が一つなくなってるよ、という意味。
じゃあ具体的にDNAとどう違うの、というと、より原始的だとか、ウイルスが使ってるやつだとか、実は人間も使ってるとか、二本鎖じゃなくて一本鎖だとか、使ってる塩基が一つ違うなど、話が長くなるので割愛します。気になる方は調べてみてください。
話が逸れたので戻しますと、ポリメラーゼという名前の酵素は遺伝子をコピーすることができる、ということですね。コピー、つまり増幅です。本文の頭の方でウイルスが自分の遺伝子を増幅装置で増やしていると書きましたが、このポリメラーゼを使っていたんです。
そしてそれを利用できるのはウイルスだけでなく、科学もまた同じです。
それがPCRと言われる技術です。
簡単に書くと、ポリメラーゼを繰り返し機能させることで特定のDNAだけを大幅に増やす、というもの。
ヒトゲノムというのは聞いたことがあるでしょうか。要は人間の持つ遺伝情報の全て、全染色体ということなのですが、これ、他の生物と類似しているもの、あるいは全く同じ部分もあったりします。例えで出すと哺乳類間だとそのゲノムの90%は同じなのだそう。鼠と人間と、90%一緒ということです。
さて、そうなるとDNAをぱっと見ただけではそれがどこの誰のものなのか、はたまたどの生物のものなのか見分けがつかないわけです。なので、その生物に特徴的なDNAだけをピックアップしたい。そういうときには、はいPCR。
PCRでその特徴的なDNAだけを大幅に増やす操作をすることで、それが増えていれば、「ああ、これはコロナウイルスがいるな」とか、「増えていないからコロナウイルスはいないんだな」とか判断することができるって寸法です。便利ですね。考えた人は天才ですね。
実際に活用されているのはリアルタイムRT-PCRというやつです。これはどれだけウイルスがいたのかも分かる代物ですが、根本の原理は上の通りです。
ただ、このPCRも万能ではありません。似ているDNAを増幅してしまうこともあります。また操作が不確かだと増えなかったりもします。なので100%の検出率とはいきません。現場のお医者さんの感覚だと70%程度らしいです。だから繰り返し検査をして再現性を取る必要があります。
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