俺の初めての出会い。彼女の二度目の出会い

1/1
前へ
/1ページ
次へ

俺の初めての出会い。彼女の二度目の出会い

『ちょっと、タバコ吸うのやめてほしいんだけど』 誰だこの人。はじめにそう思った。 確かにこの島は喫煙所に仕切りがなくて煙くさいかもしれないけど、それは俺のせいじゃない。仕切りを作らない役人が悪いんだ。 『別にいいだろ、ここ喫煙所だし。文句は仕切りを作らない役所にいいなよ』 おそらく20代で同年代だろう。顔は上の下で、よく見なきゃ美人とはわからない。身長は俺よりちょいと低いぐらいだから、160後半ぐらいだろう。四角い黒縁メガネが良く似合ってる。ただ今現在、焼売みたいにふくれっ面でもっと美人かどうかわかりにくくなっている。俺、一ノ宮遼太郎は煙草と旅行が趣味であり、丁度今日2泊3日で志摩半島のとある島に来ている。GWということもあり、その島には観光客が溢れていた。人混みが辛いということもあり、煙草を吸って一服していたところにこれが来た。流石にダルすぎる。 『とにかく、タバコやめて頂戴。』 さっきよりも鋭い言葉になっており、睨みつけてきている。そうこうしているうちに、ほとんど吸い終えたのでさっさと撤収することにした。 『わかったよ、やめるから。』 『ひどい匂いだわ』 独り言なのか、それとも語りかけてるのかわからないが、反応する気にならなかったので無視して、少し早めに泊まる宿に行く事にした。途中の坂にはなかなか味のある道や、黒猫や白猫が戯れていて田舎の雰囲気を感じとることができた。宿にはいったら、適当にチェックインしたりして夕飯まで寝ることにした。一応、6時、7時の人が殺到する時間帯は避けるつもりだ。そして7時45分、丁度良い頃合いだろう。夕食は部屋に持って来てくれるタイプではなく、食べに行くタイプだった。飯を食べている最中、人気が少なく、良い席はたくさん空いているのに敢えて俺の隣の席に来た人間がいた。昼間の例の奴だ。顔を向けて見るのではなく、そっと横目で見る。顔は素っ気なく、我関せずみたいな顔だが、彼女の周りの空気が違う。明らかに確信犯だ。それと共に、良い香りが漂ってくる。きっと風呂に入ったんだろう。昼間は髪を流していたが、今はポニーテールだ。やっぱり素は美人だからか、見惚れてしまい、うっかり顔を向けて見てしまった。 『あら、あなただったのね。奇遇だわ。』 『そうらしいな、あんたもここに泊まっているのか?』 『ええ、色々あって息抜きにこの島に旅行へ来たの』 『へー、旅行、好きなのか?』 『そんなわけないわよ。金かかるじゃない』 『そうか。』 途切れる会話。でも別に話すこともない。 『ここで会ったのも何かの縁。お名前は?』 『一ノ宮』 『そう、私の名前は加藤よ』 なんだこいつ。急に名前なんか聞いてきて。まあいいや。 『ところで一ノ宮さん。ちょっと付き合ってもらえないかしら。』 すると急に席から立ち上がり、手でチョイチョイとしてきた。飯も食べ終わり、やる事は煙草の一服と寝るだけだから、ついていく事にした。階段をスタスタあがり、少し歩いた。着いた場所は誰かの部屋だった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加