後半-3

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後半-3

高熱が出た時のように、足元がおぼつかない僕をコーイチが支えながらカラオケ店を出て、タクシーを拾う。 「う…」 タクシーに行き先を告げて、後部座席に乗り込む。 さっきよりはマシになってきたけど、まだまだ気分が悪い。コーイチにもたれかかるように僕はグッタリしていた。 その様子をルームミラー越しに見ていたタクシー運転手が話しかけてくる。 「お客さん、彼大丈夫?かなり具合悪そうだけど」 「大丈夫っすよ。弱いのにちょっと飲みすぎたんだ。後は面倒見るんで」 「ならいいけど、気をつけてねえ」 年配の運転手は前を向いて、車を発車させる。 コーイチの手は、目的地に着くまで僕の股間を弄っていた。 数十分後、到着した先はマンションのエントランス。タクシーから降りた僕は、足腰が立たない。 「お前、なんでずっと触ってたんだよッ!」 「さて何でだろうな」 マンションの一室に連れていかれ、玄関に押し込まれた。 「お、おい、ここ何処だよ」 「俺んちさ。そんな状態じゃ帰れねえだろ」 ソファーにでも座って休んどけ、と上着を抜きながらコーイチは台所へ消える。 部屋の中は至って無機質だ。 黒の革張りのソファ以外は全てが真っ白。生活用品などが綺麗に収納されているのか、生活の匂いが感じられない。 辺りを見渡しているうちに幻覚がなくなっていることに気づいた。まだクラクラはするものの、落ち着いてきてい様だ。ただ体の疼きはまだ、相変わらずだ。コーイチがタクシーの中で触っていた所為(せい)だ。 疼きが冷めることなく、部屋に上がってしまっているこの状態はヤバイんじゃないかと思っていると、コーイチがコップに水を入れて持ってきてくれた。 「飲んで少し横になってろよ」 「あ、ああ」 思い掛けない優しい声に僕は少し驚く。 水を一気に飲み、僕は遠慮なくソファーに横になる。 「さっきはやり過ぎた、ごめん」 煙草に火をつけながら、コーイチが呟く。フンワリとタバコの香りが鼻をくすぐる。カラオケ店でのコーイチは別人の様だ。 真っ白な部屋で、聞こえるのは いつの間にか降り出した雨の音だけ。 「…コーイチは何でクスリで遊んでんの」 ふと、話がしたくなって僕は口を開く。 煙草を咥えたまま、コーイチは答えた。 「別に理由なんてねえよ。煙草と同じさ」 雨音が強くなって来ていた。 外の木に当たる雨音が五月蝿い。 僕は欠伸をして、強い眠気に襲われる。 「眠いなら寝ていけよ、ホラ」 突然、コーイチは僕の身体を抱き上げてそのままベットへ移動させた。 「ごめん、何だかすごく眠たくて…」 寝室も真っ白で、清潔そうなシーツの上に僕は横たわる。柔軟剤の香りに包まれてこのまま深く寝入りそうだ。そこから僕はあっという間に寝落ちした。 水の音がする。 ピチャピチャと。 ああ、蛇口をちゃんと閉めてなかったのかな。 起きなきゃ… 僕はふと目が覚めて、天井を見上げた。いつもと違う天井にぼんやりと記憶を蘇らせて。そういえばコーイチの部屋だったと思った瞬間。 「…?」 自分の手が、自由にならない事に気づいた。 頭の上で縛られているのだ。思わず起き上がろうとして視線をずらして僕は愕然(がくぜん)とする。 全裸になっている僕の股間辺りに、コーイチの頭が見えて、コーイチは僕のソレをしゃぶっていたのだ。 夢現で聞こえた水の音は、蛇口じゃない。しゃぶられている、この音だ。 「ちょ、コーイチ!!何してんだよ!!」 全裸でいる事、手を縛られている事そしてコーイチにしゃぶられている事。僕は叫んだ。 口を離し、コーイチは僕を見る。その目は恍惚としている。さっきカラオケ店で見た、あの瞳だ。ニヤリと笑うコーイチ。 「単純だねえ、湊は。少し優しくされたら、身を(ゆだ)ねるなんて」 「な…!」 コーイチは僕の身体を長い指で触る。 「言ったじゃん。男同士のセックス、気持ちいいらしいよって」 長い指で乳首をつまみ、僕は思わず声を出す。 「や、やめ…」 「最後までヤッてないし。自分だけイっちゃって」 もう片方の手で下腹部を撫でる。そしてまたソコに口を当てる。 「(おまえ)だって、まんざらじゃない様だし」 下から先端までをペロリと舐める。 「…ッ」 さっきの快楽を思い出して、背中がゾクリとした。 僕も望んでいたのかもしれない。 この疼きをどうにかして欲しいと。 コーイチの指が僕の中をかき混ぜる。 グチュグチュという音で更に興奮してしまう。 「やァッ、あっ、あ…」 「そろそろ、入れる、ぞ」 それだけ言うと、コーイチは容赦なく僕の中にそれを入れ、突いてきた。 「んんんっ!あ、はアッ….」 痛みはすぐ快楽となり、指と比較にもならない程だ。コーイチが動く度に声が止まらない。 「あ、ああッ、あ…!も…ッ」 「やべぇ、ッ、もう出る…!」 大きく突き上げ、コーイチと僕は絶頂を迎えたのだ。 それから。 もう何度イッただろうか。 どれだけ声を荒げただろうか。 「イク…ッ!」 どれだけ、コーイチの声を聞いただろうか。 柔軟剤が香る清潔なシーツはもう、ベトベトだ。僕の手を縛っていた紐はいつの間にか取れていて、コーイチが僕の中で果てる度に、その身体にしがみついていた。 完全に、僕とコーイチは獣になっていた。 欲望のままに出して快楽を求めた。 もうとっくにクスリの効果なんて消えているのに。 コーイチが何度目かの頂点を迎えて、ベッドに倒れこむ。サイドテーブルにあるミネラルウォーターを勢いよく飲み干した。 「も、流石に…、休憩…」 肩で息をしながら仰向けになった。 外の雨はまだザアザアと降っていて、二人の息と雨音がリンクする。 僕はボンヤリとコーイチを見た。今日初めて出会ったばかりなのに、こんな事になるなんて。切れ長の目の横の、泣き黒子(ほくろ)。最中の顔を思い出し僕はゾクリとした。 「コーイチ…」 僕が、イッたばっかりの彼のソレを触ると、手を払いのけながらコーイチは呆れたように笑う。 「どんだけ淫乱なんだよ。人嫌いのくせに」 「責任取れよ、お前が誘ったんだから」 面倒くせぇ奴だなと笑って僕にキスをする。舌を絡めながら。 今何時で、何時間ヤッてたのか。 身体のあちこちが痛いし、ベトベトしている。 「気持ち悪ぃな」 二人で笑う。非日常な空間で僕たちはベッドの上にいた。 「…あのさ、湊。お前、名前なんていうの?」 タバコを手にして咥えながら、コーイチが僕に聞いてきた。 「なんで聞くの」 「こーゆー間柄になったんだから、教えてくれてもいいだろ」 タバコに火をつけると紫煙があたりに流れる。 「ミズキだよ。瑞穂の瑞に、希望の希。女の子みたいな名前だから嫌なんだ」 フゥーと、煙を僕の方へ吐き出してコーイチは笑う。 「可愛らしい名前じゃん」 「はあ?」 それから何時間経っただろうか。流石にそろそろ帰らないと。時計を見ていると、コーイチが名残惜しそうに、首筋を舐めた。 「なあ携帯番号、交換しようぜ」 「…なんで」 コーイチはニヤリと笑う。 「瑞希ほど身体の相性いい奴、いねえからさ」
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