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出会い
それは激しい雨の日だった。
今日のバイトも変わらず深夜上がりで、疲れ果てた俺の身体は、誰も待ってはいない自宅へ向かって動いていた。
激しい雨音が鼓膜を刺激する。偏頭痛持ちのため悪天候の日ときたら、それはもう命懸けなものだ。
頭も痛くなっていた。これは疲労のせいなのか天気のせいなのかわからない。
いつも通りの帰路をふらふらした足並みで歩いていると、乏しい電灯の明かりの下にあるものを見つけた。
ダンボールだ。
中身は大体予想がつく。
蓋は閉じられているものの、ダンボールは長時間の雨ざらしのせいで、ひどく雨水が浸透し、ダンボールは今にも崩れかけている。
開けないほうがいい、知らないほうがいい。
俺はそのダンボールをまるで見なかった事にして再び歩き出した。
何も見ていない、あれはただの不法投棄のゴミだ。
ゴミなんだ。不法投棄の。
そのまま走ってでも帰れば良かったのに、俺は聞いてはいけない声を聞いてしまったのだ。
「ニャー…」
それは今にも消えそうな掠れた声だった。必死に残った力を振り絞ってそれは俺を呼んでいた。
ああ、聞かなければ良かった、なんてものを聞いてしまったんだ。
俺はひどく後悔した。
俺は恐る恐るそのダンボールに近づいていった。
手が震える、中身なんて確認して誰が得をするんだ。俺なのか。
怖い。しかし、俺の手は気づけばそのへにゃへにゃな蓋へと触れていた。
そしてついに開けてしまったのだ。
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