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第一話「6年2組にて」
「で、ヒロキは『X』と『Y』どっち買うのん?」
友人の健太にそう問われた中村ヒロキは、返答に窮した。
2013年10月7日(月)。
今、日本全国の小学生たちの話題の中心となっていたのは、いよいよ今週の土曜日に発売の迫ったニンテンドー3DS用RPG『ポケットモンスターX・Y』であり、それはヒロキたちの通う、ここ6年2組においても例外ではなかった。
「うーん……」
「オレは『X』で、拓海は『Y』やで」
「うん、せやからヒロキくんはどっち買うてもええで」
ヒロキの答えを待たず、健太と、もう一人の友人であるメガネ男子の拓海は勝手に話を進めていく。彼らはヒロキの誕生日が『ポケモンX・Y』の発売日と同じ10月12日であることを知っており、それならば誕生日プレゼントは当然ポケモン以外にはありえないだろうという前提で、既に『X』と『Y』どちらを選ぶかという段階まで話がすっ飛んでいたのである。
「ポケモンかぁ。ポケモンはちょっとなぁ……」
「なんや? ヒロキあんだけゲーム好きやのにポケモンやらへんのか?」
「興味はあるけど……だって、あれムズいやろ?」
ヒロキの返答に、健太は怪訝な顔をした。
「どこがや?」
「え? どこがって……いや、なんとなく。昔ちょっと触って、なんかムズいなって思って、それっきり……」
その答えに、今度は拓海が眼鏡の奥の瞳を光らせた。
「ほんなら、ボクらが一からポケモンのこと教えましょか。なぁ、健太くん」
「せやな」
勝手に話が進んでいく。
「いやいや、ちょっと待って。うーん……分かった。今日帰ってから、いっぺん考えてみるわ」
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