勘のいい友人

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「何らかの方法って何だよ」 「それは僕の想像には及ばないけれど、何かトリックとかを使って自殺に見せかけて誰かが殺したとか。君ならわかるかもしれないと思ったんだけど」 「永倉の死因は転落死だぞ。まずどうやって永倉にフェンスを越えさせるんだよ。フェンスをよじ登るだけで骨が折れるだろうが。普通の人間だったらまずそんな面倒くさいことには応じないぞ」 「それは何らかの方法で飛び越えさせたとか。または飛び越えざる得ない状況だったとか」 「お前はそんなに永倉の死を他殺にしたいのかよ」 「別に自殺でも構わないけど、永倉さんは自殺するような人には見えなかったから。クラスメイト達もみんな、どうして自殺したんだろう? って首を捻ってるよ。理由もないのに人は自ら死んだりしないだろう?」 「確かに飛び降りが自然な死に方だとは思わねーけどな。屋上には三メートル近いフェンスも張られているし、誤って転落しようがない」  渋い顔で達也は言う。 「それで、結局のところお前は永倉がなぜ飛び降り自殺したのか知りたいって言うのか?」 「それは当然だろう。だって永倉さんは僕の恋人だったんだから」 「お前、永倉とも付き合ってたのか!?」  達也は驚きの声を上げる。久志と喜美枝が付き合っていたこと自体知らなかったようだ。もっとも、久志もいちいち達也に誰と付き合い始めたかを報告したりはしていなかったが。 「おい、礼香ちゃんとやらはどうしたんだよ」 「それは去年の秋までの話かな」 「永倉と付き合い始めたのは?」 「十二月だったからギリギリ去年の冬かな」 「お前女子を取っ替え引っ替えし過ぎてないか? 今まで何人と付き合ってきたんだよ!?」 「えっと……」  達也に訊かれ一人、二人、三人……と久志は指を折りながら記憶を辿り数えてみる。 「覚えてないのかよ!? というか片手で数えられないってどういうことだよ。中学入ってから無双し過ぎだろ!?」  左手の指を折り終え右手の指を折り数え続けたところで達也にツッコまれた。 「そうなのかな?」 「普通の男子中学生はモテたとしても交際人数が五人を超えたりしないと思うぞ、さすがに。チャラ男め! たくさんの女の子と付き合いたいとかそういうやつなのか!?」  「別にたくさんの女の子と付き合いたいと思ってるわけではないけど、長く続かないからかな?」  若干引きつつも憤慨する達也に久志は答える。たくさんの女の子と付き合ってきたという自覚はあまりなかったため、自然と疑問形になった。  異性に好かれること自体は、久志にとってとても心地の良いものだった。自分という人間が認められているのだ。しかし一対一で特定の相手と長く付き合うのは、どうにも苦手なことだった。どこかしらで、ボロが出ているのだろう。努力はするものの、長続きしなかった。 「君は今まで何人ぐらいと付き合ってきたんだい?」 「非リアの俺に喧嘩売ってんのか?」 「……君の方が性格はいいのにね」  ジト目で睨んでくる達也に、久志は肩をすくめる。達也の方が久志よりも遥かに人は良い。本心から久志はそう考えていた。
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