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「へーへー、リア充様の嫌味かよ」
「今はフリーだよ」
「お前の場合、彼女の有無は関係ない! というかそんなに彼女を取っ替え引っ替えしてるといつか刺されるぞ」
「一応今まで円満には別れてきているから大丈夫だと思うけど、外聞は良くないし、気をつけるよ」
「お前は少しは付き合ってきた女の子達の気持ちを考えてあげるべきだぞ」
笑顔で、爽やかですらある受け答えをする久志に達也は呆れたような表情を浮かべた。
「僕に好意を持ってきたのは彼女達だよ? 彼女達が僕を選んだんだ」
「だからと言ってどう扱ってもいいといことにはならないと思うぞ」
「気持ちを考えると言ってもさ、どういう行動を取ったらそういうことになるのかな? 最初から付き合わずに振るとか? でも今まで付き合った女の子に対しては、僕も少なからず良いかなとは思っていたんだよ。彼女達と温度差はあったかもしれないけど」
苦笑しながら久志は思う。一人だけ――永倉喜美枝だけは例外だったと。
「本当に好きになった女の子とだけ付き合うとかさ。すぐ別れる、すぐ新しい彼女を作るっていうのは付き合っていた相手に対して配慮が欠けていると思うぞ。彼女達もその友達とかも良い気がしないだろうしよ」
「良いなと思ったから付き合う。合わなかったから別れる。別れたから新しい相手を探す。僕のことを好いてくれている女の子がいた。僕も悪くないと思っている。だからまた付き合う。その繰り返しで、合わなくて別れたて恋人という関係を解消しているんだから、新しい相手を探す権利は僕にも彼女達にもあるだろう。合わなかった相手にいつまでも縛られている必要はないし、そこに対する配慮だとか他人が何を感じるのか、僕にはさっぱりだ」
「お前が他人に共感できないというのはよく知っているがな。一般的に好きで付き合っていた相手が自分と別れた後すぐに別の恋人を作るのをあまり良くは思わないぞ。自分はこれっぽっちも想われていなかったんだなってな。いずれ彼女らも別の相手と付き合うことになるとしてもだ。他の人間から見ても、こいつは相手を大切にしない奴だってなるしな。相手が傷つくかもしれないという事実だけでも心に留めて慎むべきだと俺は思うぞ」
真面目な面持ちで達也は言った。
赤井達也は知っている。久志には他人への共感性が欠如していることを。
それでも彼は久志から離れず、こうした会話にも付き合ってくれる。達也は出会った当初からずっとそうだった。
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