定規を羨む形状記憶

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定規を羨む形状記憶

定規みたいな人だと思った 曲がることも折れることもなくて 真っ直ぐ、背筋までもが真っ直ぐで なんて生き難い人なのだろうと 形状記憶ワイヤーからしたら思うのだけど その真っ直ぐさに欠けがあったなら こんなにも惹かれることはなく ただ、通りすぎていた 決して真似のできない生き方 濁らず澄んだ瞳は綺麗だ ただ、時折独りで溢す涙が どうしようもなく不安をうむ 定規みたいなあなただから 自分が歩む真っ直ぐな道に 疑問を抱いてやしないだろうか? ぐにゃぐにゃと芯のないこちらをみて 羨んでやしないだろうか? あぁ、そのまま そのままでいいんです あなたがそのままでいてくれたなら 形状記憶の私でも、いつか、いつか 真っ直ぐな形にピンとはられた 一本線になれるのではないか。なんて 淡い夢を見続けることができるのですから
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