神への祈り

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神への祈り

首に縄を括りつけ 懐には退職届 寝床代わりの鉄の処女 生命線はついに途切れて ようやく終わると目を閉じる あぁ神よ なぜ私を見捨てたのですか? 見捨てられるほど育んだ愛も 語らった日々もないくせい 閉じる前には恨みを溢す あぁ、神よ お前もやってられないよなぁ 産まれては死にゆく数多の命 その全てに目を向けるなど とうていできはしないのだから 勝手に消えゆく生の欠片に 気など配る余裕もないか あったなら、あったならば この世はディストピア的な意味のない ユートピアになっていて こうして終わりを日ごと望み 眠っては朝を繰り返す欠陥品など とうに塵芥になっている そうだろう、そのはずだ なにせこの世は不完全で 目に見えぬ領域を あたかも理解したかのような したり顔で語る死にたがりなど どうして許容できるだろう 訳もわからぬ存在に祈り 心を砕き、時間も、金も惜しみ無く捧げる なんとまあ、美しき無償の愛だこと その全てを怠ったからこそ 寝床代わりの鉄の処女 なんとまあ、わかりやすいことだ あぁ、神よ 愛しいなどおもったことも 存在を感じたこともない 大いなる自然の祖である意志よ 願わくば、願わくば もう二度と、苦しみのなかで生きる地獄を 与えないでくれ 安息の布団を被るように扉を閉める 悲鳴もなく、痛みを感じる暇もなく 暗闇と共に地獄は終わり 光と共に新しい地獄へ行き着いた
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