ウロボロス

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ウロボロス

祖母の母体から生まれた悪魔を 滅ぼすために過去に来たのです そう言って微笑む未来の私は 銀の皿に生首を戴き 滴る血を恍惚と眺める どちらが悪魔かよくわからない生き物でした 祖父殺しのパラドックスはあてはまりません 母の母体から生まれた悪を 滅するために過去に来たのです そう言って首を絞める未来の私は 布団にくるんだ四肢を抱き 嗚咽を隠す事無く悲劇に浸る どちらが悪かよくわからない生き物でした 祖父殺しのパラドックスはあてはまりません 未来の私は改編に改変を続けているのに 過去の私はいくらでも消えているのに 何故でしょう 私はいつだって存在しているのです 祖父殺しのパラドックスに当てはめたいのに 姿も、心も、性別さえも異なる未来の様々な私は 常に私を殺しに来ます 歩む道を塗りつぶしにきます それでも、何故でしょう 何故でしょう それが私だと私が認識してしまうのです 幾重にも重なる世界線ではなく 同一世界の果てにいるまだ見ぬ私は 繰り返し繰り返し殺しに来ます ある時は男の私を ある時は母の私を 殺した私が私になる呪いを受けているかのように 永遠に殺し続け 存在し続け 終わりがないのです あぁ、誰か輪廻の回転を止めて下さい 泣きながら請う憐れな姿をウロボロスと呼んだのは誰が最初か
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