乙女色の季節

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乙女色の季節

乙女色に染まる木々に手を伸ばし、天から降りてくる麗しい薄紅を掌にそっと抱く。掌で包んでしまえばすぐにでも褪せてしまう薄紅の儚さは人の生涯のようだと笑う君の体も乙女色に染まっていく。 その姿を見る事が出来る時間をもっと大切にすべきだったのだろう。乙女色に染まった木々の色が新緑に変わる頃、君の背中は遠くなり孤独を享受するだけの日々。幾度季節が巡ってもあの頃のように輝いた色を目にとどめる事が出来ないままに、目に映らなくなった乙女色を今年も探して街を歩く。 求めている色は既に誰かの隣で色づいているのだろう。それでも、いつかまた。さよならと聞こえたまたいつかに奪われたままの心は君を求め続けている。
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