第1話 空気が読めないカウンセラー 恩田 武

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「お前また空気を読まずに相手に変なこと言っただろう? 」 「空気なんて読むモノではない。味わうモノだ。チョット面白くしてやろうと思って言っただけだ」 「お前やっぱりサイコパスだな」 「サイコパスとKYは紙一重だ」 「いやいや、同類だ」 こいつは赤井 翼と言って同じ病院で同時刻に生まれた同級生だ。生まれたときからの腐れ縁ってやつかな。 こいつは今では歌舞伎町で№1ホストとして5年連続君臨している。不景気の時代と逆行して見るからして高そうなブランド品を身に着けているのだから、俺と違ってかなり羽振りがいいのがうかがい知れた。 「随分、羽振りがいいな? 」 「そうでもないぜ」 翼は余裕を含めた笑みを浮かべながらドシッとソファーに座って足を組んだ。同じ病院で同じ時間に生を受けたのにこうも違うなんて神様には恨みしか覚えなかった。 俺は虚しい表情を浮かべながらゆっくりとソファーに腰を下ろした。 「なあ? 明日株買わないか? 」 「何で? 」 「実は、明日の今頃総理大臣が電撃辞任するんだ。混乱が続く政治の影響で株価が下落する」 「いいよ。俺は株にも政治にも興味ない。それに金もないし」 「俺の予知能力は確かだぜ。1日1回だけ自分の思ったことが予知できる。絶対に儲かるのにな」
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