第1話 空気が読めないカウンセラー 恩田 武

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第1話 空気が読めないカウンセラー 恩田 武

2030年 5月某日 東京都中野区某所 俺の名前は恩田 武28歳だ。中央線の中野駅付近にある小さな古びた雑居ビルの3階で俺は心療内科を開業している。 心に傷を負った人を癒すためのカウンセラーとして日々を送っていた。建物は高度経済成長時代に建てられた雑居ビルを借りており、年季が入っているせいで至る所にヒビが見られ、廊下なんて排水口の嫌な臭いが俺の嗅覚を刺激する。 もっと金が稼げて生活が安定するならこんな所じゃなく、もっと良い物件に引っ越しをするがいかんせん俺にはカウンセラーとしての才能に疑問符を抱く時もただある。 俺がいつもの様に白衣に着替えていると、この日は朝から一人の若い小柄で黒髪が似合う20歳の短大生の彩さんという女性が来院したお陰で朝からテンションが急上昇だ。 入ってくるときは慣れないせいか廊下に漂う悪臭に顔を歪ませ白いハンカチで口元を抑えながらやってきた。 まあ無理もない。俺なんかは小さい頃からこの臭いと共に育ったのでなんも感じなかった。 簡単にアンケート的な問診を行い早速、羽をもがれた可愛い天使ちゃんの診察を開始した。 俺はいつも以上に愛想を振る舞い、スタバ顔負けの熱々で美味しいコーヒーを白いテーブルに置いて、すり切れた黒いレザーソファーに深く座りながら悩みを聞いた。 「では彩さんのお悩みとは何でしょうか? 」 「実は…… 」
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