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平和な世界
「リン、あれっ」
「あっ」
「おったぞー、スライム覚悟ー!」
小さな足音が沢山聞こえる。ただでさえ弱いスライム、魔力の落ちた今では、「狩りごっこ」という子供達がする遊びの餌食だった。
枝で体を突き刺される、殴られる。命を落とす者も数匹いた。
「ピキィー!」
草原で昼寝をしていると町から子供達がやって来て、私達を襲う。勇者が取り戻した平和な世の中は、私達にとっては平和なんかではなかった。
こんなところで死ねない――――
一心不乱に逃げる、魔王軍の生き残り、私はそれが誇りでもあった。いつかは魔王様復活。そんなことを信じて夢見ながら、他の仲間もそうだろう。だからその日が来るまでは、絶対死ねない。
「待てよスライムー」
子供から逃げるのも命懸けだ。
「キャーッ!!」
逃げ遅れた友達のスウが捕まった。スウは一瞬にして子供達に囲まれた。数人の枝を振り上げる姿が見える。
スウの泣き叫ぶ声と、鈍い濁音が何回も聞こえる。
「スーウ!」
「に、にげ……て、リン」
助けたいのに、助けられない。
魔王様健在の頃は全く逆の立場だったから余計だ……本当に情けない、悔しい……
私は友達のスウを見捨てて逃げてしまった――――
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