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私のフレアボール
どうせ使えない魔法なら、声が潰れてもいい、いつ殺されるか恐怖で怯えながら生活するくらいなら、いっそのことスウや魔王様の元へ行こう。
そう決断した私は最後にもう一度、エド爺の涙の前で全力の声を張り上げた。
「フレア! ボーール!」
ボンッ!!
固く目を瞑ったままだった。
爆発音で目を開くと、そこには木が裂け炎の固まりになっているのが目に飛び込んできた。
「リン!」
エド爺がフードを脱ぎ、燃える木を見ながら目を輝かせている。涙が流れているのに、口角は大きく上がり目尻は下がっていた。
――――できた。
口をぽかんと開けたまま目に映る赤い炎が実感させる。嘘じゃない、夢じゃない、これは現実に起こっていること。
私はスライムだけど魔法が使えたんだ。もう最弱のスライムなんかじゃないんだ。
「アッハハハハッ、リン、出来たぞ、出来たのじゃ! 見事なフレアボールじゃ! アッハハハハーー」
私を目線の高さに持ち上げ、燃える木を指差し喜ぶエド爺、それは自分のことのように。その顔を見て私も涙と笑顔が溢れてきた。
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