魔王様の敗北

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魔王様の敗北

「魔王様あぁぁああー!!!」 「うぐぁあああ」   五人の男女が一人の魔王様に立ち向かった。深緑色をしたローブの魔法使いは炎の海で逃げ場を消す。白いフードのヒーラーは他の仲間に回復魔法をかける。長いかぎ爪の武道家、大きな斧の戦士は魔王様の両腕を押さえる。  こ、こんなの勝てる訳ない……  そう思った瞬間、神秘的な群青色の鎧を身につけた青年に飛びかかられ、最終形態まで進化させられた魔王様は、胸の真ん中にある深紅の装飾に鋭い剣が突き立てられた。  魔王様の叫びが城中に響きわたると、高い天井に頭が届きそうな魔王様の立派な体が膝から崩れた。  魔王様の目は光を失い、青年達は歓喜の声をあげた―――― ◆ 「……って、話だ」 「そうですか……」  私はスライムのリン、魔法使いのエド爺に魔王様の最後を聞いていた所だった。  数年前、魔王様は勇者達に討伐されたと報告を受けて、まだ小さかった私も、落胆したのを覚えている。  魔王様の敗北により、私達魔物の能力は落ち、少動物並みの力しか持てなくなってしまっていた。世間では平和になったとか騒いでいるようだが、生き残った私達は、どうすればいいのか迷いながら生きていた。  片身の狭い思いで暮らすか、残党として、町に乗り込み命を落とすか、だった――――
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