最期の像

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 私の同期の彼だ。年は彼の方が少し下だったが、気が合い仕事の合間によく色々な話をした。話をしていた時の光景、一緒に戦った時の光景が鮮明に浮かぶ。昇進したことで一人で戦うことになり、今では話すことも無くなったが。  いま彼はどうしているのだろう。もしかしたら生きているかもしれない。もしかしたら死んでいるかもしれない。意識が遠くなっていく中で、彼が私の名前を呼ぶ声が聞こえた。はは、最期が彼ばかりとは本当にどれだけ寂しい人生を送ってきたのだろう。  不意に、もう一度彼の顔が見たくなってきた。もう殆ど残されていない力を振り絞り目を開けてみる。彼がいるわけない、見えるわけない。そうわかっていたのに、なぜか開けないという選択肢を私は拒んだ。  少しだけ、光と影が見える。人の……影か。私を抱えている。しょっぱい液体が口に入ってきた。泣いているみたいだ。瞳に涙が入ってきて、眼鏡のように視界を広げる。先には……彼が見えた。なぜいるのだろうか。何を言っているのだろうか。声を出したいけど出せない。彼の声ももう聞こえない。でも、悲しんでくれているのは分かる。  悲しんでくれることが嬉しい。今まで頑張った意味がまたひとつ増える。だがこれは、彼に負けてしまったな。まだ生きていたいと思ってしまう。少し悔しい。でも私には、それ以上の幸福感が生まれた。もう声は出せないから、私はそっと心の中で彼に言う。 『ありがとう…――』
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