浅き夢見し頃に囚われて

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「やってきました、USJ!」 「誰に言ってんだよ。ほら、行くぞ。」  こういうのは雰囲気に合わせたノリと勢いが大切なのに。私の頭を軽くぺしりと叩いて先に歩いて行った達己を、慌てて追いかけた。  私は、あの日達己と約束してから迅速に行動を開始した。なんせお盆休みだ、新幹線もなかなかに混んでいるから、日程はよくよく吟味しなければならない。達己を拘束するのもなんなので、お盆の中日に行って帰ってくることにした。達己に予定を確認したが、明確に予定が決まっている日はないとのことで、勝手に決めた。こういう時の新幹線は指定席を確保しておくに限る。なんとか2人で座れる場所を確保して、ホテルは一応ツインの部屋を探す。USJの最寄りの駅は流石に見つからなかったが、それにこだわらなければ一応空きを見つけることができたのでさっさと予約してしまう。  私は経理課で休み前に立て込むというほどの業務はなかったけれど、達己は花形の営業部の優秀な営業マンらしく、休み前にと連日忙しそうだった。 「達己、お盆前忙しそうだったから今日来るのドタキャンされるかと思った。」 「んな訳ないだろ。可愛い可愛いいろはちゃんのためにも、頑張って終わらせたんだよ。」 「わー、嬉しい。タツキダイスキー。」  なんだよそのやる気ない大好きは、と達己は私の頭をぐしゃぐしゃに撫でながら目尻を下げて笑った。これだ、この顔だ。最近、この顔を見るたびに胸がきゅうとなる。理由は、考えないようにしていた。  入ってまず、犬のキャラクターのたれ耳カチューシャを買ってお互いつけた。達己も妙に似合っているのが笑えた。そのあと、ファストパスを駆使しながら色んなアトラクションを回った。 「やっぱ、魔法使いっていいよな。」 「んー、私はやっぱり黄色いあの何とも言えないフォルムの方が好きだけど。」 「じゃあ、それのぬいぐるみ買ってやろうか?」 「部屋が騒がしくなりそうだから嫌。」  1日中大騒ぎしたら、疲れ果てていてホテルのベッドに倒れ込んだ。なんとかチェクインまでは頑張れたのだけれど、部屋まで着くと疲れが限界で寝てしまった。ちなみに荷物はこちらに着いて預けてから遊びに行ったので、チェックインと一緒に受け取ってある。  起きたら、お風呂から出てきた達己と目が合った。見慣れているとはいえパンツいっちょで出てくるのは如何なものかと思う。 「お、起きたか。」 「今何時?」 「21時。適当にメシ食いに行く?それとも部屋で良いなら買ってくるけど。」 「疲れた、外出たくない。」 「なら、適当に買い出ししてくるから風呂入っとけ。すっぴん云々言うなよ。」  言わないよ、と返しながら溜め息を吐いた。この男と会う時は、いつも化粧を落としてから寝るようにしているので、ガッツリすっぴんを見られている。でもいつの間にか気にしなくなってた。何も言われないし。  なんというか、どんどん私の中の達己が占める割合が増えている気がする。
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