浅き夢見し頃に囚われて

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 お風呂入る、と言ったら何故か風呂場で2回戦と相成った。そして、帰る帰らない論争があったがお酒も買っちゃったし、ということで朝まで滞在することに。そして缶をぷしゅっと開けると、乾杯、と缶をぶつけ合った。 「今更だけど、達己って彼女いないよね?私やだよ、刺されるの。」 「居ない。で、何で刺される前提なんだよ。いろはこそ、彼氏居ない?」 「居ない居ない、流石に浮気は相手も自分もえぬじー(NG)。」  そっか、なんて目尻を下げて笑うから、少しドキっとした。イケメンの笑顔は破壊力満点だ、おお怖や怖や。気を付けなくちゃいけない、何をとは言わないけど。こういうのは、気付いたら負けなのだ。 「今更と言えば、いろはって変わり過ぎじゃない?最初、気付けなかったし自信無かった。」 「大学最後のハメ外し、ってヤツだよ。社会人であのままはヤバイでしょ。むしろよく分かったね。」 「いろはって名前もそうだけど、うちに入社するって聞いてたから。たぶんいろはだろうな、って。」  酔いが回ってきて、だんだんぶっちゃけトークとなってきた。お互いに遠慮が無くなってきたというか、疑問に思ったことを聞くのだが、よく考えたらカフェで聞いた内容を繰り返しているだけの気もする。  達己は、詐欺だ―って笑っていた。 「あれ、……?」 「起きた?おはよう。」 「うん?おはよう……?」  よく寝てたね、って笑われて、何時って聞いたら7時と返ってきた。周りを見ると、サイドテーブルに空き缶が転がってて、私はなぜか素っ裸で寝ていた。 「言っとくけど、いろはが脱ぎ始めたんだよ。俺じゃない。」 「えー、暑かったからかなぁ。というか達己、早起きじゃない?」 「そう?普段からこんなもんだよ。休日だからって寝坊してると平日がつらい。」  そんなもんなのか、と内心感心しながらふーん、と返事をしながら鞄を漁って下着を取りだすと手早く身につける。服を集めていると、達己から視線を貰って首を傾げた。 「何で鞄から下着が出てくるの、持ち歩いてるんだ?」 「いや、達己と会うから一応?」 「誘われるかもって?用意周到だな、間違ってないけど。」  達己は既に服を身に着けていて、にやにやと着替えている私を見ていた。しばらくゆっくりしていたが、お腹がすいたので忘れ物がないか確認して一緒にホテルを出る。  太陽がまぶしい。思わず目を細めて、周りを見れば日曜日の朝だからか人は疎らだった。 「じゃあ達己、またね。」 「え、朝ごはん食べていかないの?」 「行く?正直ぺこぺこだからどこか入ろうとは思ってたけど。」 「嫌ならいいけど。」  いろはと居るの楽しいから、なんて言われて否と言えるはずもなく。半日以上一緒に居るなんて、セフレとしては珍しいんじゃないだろうか。そもそも、セフレということでいいのか分からないけれど。どちらにせよ達己がいいなら、構わない。
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