浅き夢見し頃に囚われて

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 私と達己の関係ってなんだろう。ヤることやっちゃってるし、セフレというのが一番近いんだろうか。でもそれにしては、距離感が近いようで遠く、なんだか気の置けない友人という気もする。でもやっぱり、傍から見てセフレというのが正しいんだろうな。  あの日は、あのあと朝食を食べて別れた。そして、家に帰ってまた寝たら夕方になっていた。よく分からない休日の過ごし方だな、と思った。 「――いろはちゃん、聞いてる?」 「聞いてます。で、何でしたっけ?」  もう、ちゃんと聞いててよ、と怒ったフリをする静香さんにえへへ、と笑った。  経理課に配属された新人は私だけで、指導係の静香さんが本当に色々と面倒見てくれていた。自然と親しくなり、呼び名もお互いに下の名前になって、お昼も一緒に過ごすようになった。たまに静香さんも同期の付き合いで一緒に食べないこともあるけど、そういう時はサンドイッチをテイクアウトして近くの公園で食べるのがマイブームとなっている。同期の子は一緒の部署の子同士で固まってて、なんとなく混ざりにくかった。 「おひとり様?寂しいねぇ。」 「煩いな、悪い子達己くんにはクッキーあげないよー。」 「うそうそ、いろは様どうぞめぐんでちょーだい。」  たまに、公園で食べていると達己が現れることがあった。最初に見つかった時は思いっきり爆笑された。どうやら営業回り中だったらしく、かっちりとスーツを着こなしてブリーフケースを片手に一人でいた。たまたま他に会社の人が居ないから良かったものの、誰かいたらどうするつもりだったんだろう。それ以来は、見つかった時は達己もサンドイッチをテイクアウトして一緒に食べた。私も達己も、ツナマヨのサンドイッチだ。妙に気が合うな、と思った。  静香さんが達己のファンだからか、達己の情報は自然と集まってきた。倉光達己、27歳。彼女なし、最後に居たのは3年前との噂。意外にも浮名を流している訳ではなく、むしろ硬派と名高い。食事に誘っても撃沈する女子が後を絶たないというのは、イマイチ信憑性に欠ける気もするが、ともかく憧れの君であるのは間違いない。  なんでそんな人が、しがない後輩である私にそんなに構ってくれるのかよく分からなかった。やっぱりセフレだからなのか、セフレだから構ってくれるのだろうか。 「ん?どうした、惚れた?」 「そういうのジイシキカジョーって言うんだよ。」 「なんだその片言。」  ははっ、と笑う達己にきゅう、と胸が苦しくなった。
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