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脳裏に残ったみんなの笑顔が、その墓と同じようにさらさらと崩れ落ちていく感覚にシンの背筋が凍りつく。
「やめろって! お前らの相手は俺だろ!」
「よくわかってんじゃねえかクソガキ」
「ぐっ……ッ」
男たちの攻撃は動揺するシンを容赦なく襲い、次第に身体から力が抜けていく。
腹の奥底から怒りと激しい憎悪の念が込み上げ、目の奥がちりちりと焼けるように熱くなっていく。
――どうして、こんな腐った人間が生き残ってアイリスたちが死ななければなかったのか。
――どうして、殺されなければならなかったのか。
飛びそうだった意識は怒りによって呼び戻され、取り落としてしまいそうだった槍の柄を握り直した。
「てめぇらが死ねばよかったんだ! 生きてる価値もねえお前らが、そいつらに触るな!」
男たちは墓を壊す手を止め、全員でシンに襲い掛かってくる。
『――あなたたちは絶対に、何があってもその手を血に染めないで。この世に死んでいい人間なんかいないんだから……ね、私の可愛い子どもたち』
ずっと遠くでアイリスの声が響いたが、シンはその言葉にもう耳を傾けはしなかった。
どんなに願っても祈っても、救われることも――助けてくれるひともいないのだから。
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