北風と太陽と就活生

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時は2020年。北風と太陽が久しぶりに会って話をしていた。 太陽「やあ、久しぶり。元気?」 北風「ああ、元気だ。だが、退屈している。何か面白いことをしないか?」 太陽「そうだね、何する?」 北風「そうだな、久々に例の勝負をしないか?」 例の勝負とは、昔々北風と太陽の間で行われた勝負である。 ルールは、偶然現れた旅人のコートを、先に脱がせた方が勝ちとなる。 その時は太陽が旅人を温めて、コートを脱がせ北風に勝利した。 太陽が答える。 「いいけど、その勝負は僕に有利じゃない?」 北風「そうだな、だが俺にも勝算がある。そして、場所は俺が決める。それでいいか?」 太陽「いいよ、別に。じゃあ勝負しよう」 北風が案内した場所はとある大学のキャンパス。 そこでは、多くの企業がブースを開いておりリクルートスーツを着た学生達が集まっている。 そう、今は就活の季節なのだ。 北風が1人の学生を指差して言った。 「あの学生のスーツを脱がした方が勝ちだ。いいな?」 太陽「いいよ、今度は僕が先にやるね」 そう言うと太陽が学生を照らした。 彼の周りの気温は35度。猛暑である。 当然、スーツのジャケットなど普通は暑くて着ていられない。太陽もそう考えていた。 しかし、何故か彼はジャケットを脱がない。 彼の全身からは汗が吹き出し、ハンカチでしきりに汗を拭っている。 見るからに辛そうだ。 その様子を見て太陽は驚いた。「どうして彼はジャケットを脱がないんだ?暑い時には服を脱ぐ。これが人間として正常な反応ではないのか?」 そして、太陽は考えた。「きっと、この学生だけ特殊な性格なんだ。北風はそれが分かっていて彼を指名したんだな」 そこで、太陽は他の学生達も同様に照らし始めた。 太陽「他の学生なら、通常の人間と同じように、服を脱ぐはずだ。見てろよ!」 太陽は他の学生達も同様に照らした。 他の学生達も同様に汗をかき、ハンカチでしきりに汗をぬぐっている。 しかし、何ということだろう。 暑くて辛そうなのにも関わらず、何故か皆が皆ジャケットだけは絶対に脱ごうとしないのだ。 太陽は驚いて怖くなった。 「僕にはもう人間というものがよく分からない。もう無理だ。北風、君の番だ」 北風「お前が驚くのも無理はない。俺が今からお手本を見せてやる」 そういうと、北風はキャンパス内に猛烈な風を巻き起こした。 ブース内の資料は吹き飛び、会場はめちゃくちゃになる。 とても企業説明会どころではなくなり、程なくしてイベントは中止された。 そして、太陽は目の前の光景に目を疑った。 何故なら、あれ程頑なにジャケットを脱がなかった学生達が一斉に暑いと言いながら、ジャケットを脱ぎ出したのだ。 太陽「これは驚いた。何にが起こっているんだ?もうわけが分からないよ」 北風「俺も分からん。だがアイツらはこの方法で服を脱ぐ。俺から言えるのはそれだけだ」 こうして、彼らの勝負は北風の勝ちに終わったのだった。
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