引きこもりの異世界転生() ーーそこに見えるは、誰もいない孤独の世界ーー

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電子情報の海ーーインターネットにはあらゆる情報が不規則に流れている。その中では真実と虚偽の区別が判別できない。真実のような嘘や、嘘のような真実……そのどれもが等価値に浮かび上がり、僕たちユーザーを試している。  そうだ……僕は試されている。理想の世界に行けるかの資格を……真実と虚偽の入り混じる情報に試されているのだ。  もし許されるのなら、どんな犠牲を払ってでも、僕はここではない違う世界に行きたい。異世界に行きたいのである。  いや違う!新しい体験をしたいなどという浅はかな意味ではない!この現実世界に嫌気がさしたのだ。そんなふうに、ユーザーインターフェースに向かい、問いかけ続けた。  検索エンジンは答える。まことしやかに囁かれているこの世界の噂を。出鱈目だろうと、昔からある情報だろうと、真実でなければ意味がない。僕は真実を探し求めた。  見つけた……異世界に行く方法を……どうやら、ある不気味な幾何学模様を見つめ続け、浮かび上がる残像の中に身を投じるらしい。  視覚化のイメージに手こずりながらも、何時間もスマートフォンを見つめ続け、不気味な模様を再現し続けた。やがて、残像は体を包み込んだ……僕は、現実の世界ではない、異世界へと消えていった……  誰もいない世界に辿り着いてから、幾年の時が経っただろうか……?時間感覚を喪失した僕には何もわからない……ただ無色透明な空間に、浮かび続けるだけであった。ここには僕以外誰もいない。ただ、ここでは記憶を忘れてゆくのみである。スマホを眺め続けてから、今まで、そんな世界に囚われ続けている……多分、これからも……  現実世界を生きることのできなかった僕は、自我をなくすまで、ここで揺蕩い続けるのだろう。 ここには何もない。 外に出られなくなったあの日から…… 太陽を忘れたあの日から…… 僕が、引きこもったその日から…… ここには何もない……
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