46:ムラト・ヒエダ

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「……そんな話が信じられるわけないだろ」 「そうか。だがわたしは君たちを信じることにした」ムラトが口の端を緩める。「君たちの説得はお粗末そのものだったが、なかなか胸に響いたのでね」 「……試されてたってわけか」マクブライトが嘆息する。 「いや、確認しただけだ。ドン・イェンロンに言われていたことが事実かどうかをね」 「オヤジに?」  ハナコが訊く。 「ああ、彼は我々の計画の一部始終を知りながら協力してくれている。だが、『ハナコ・プランバーゴがその作戦の全容を知れば必ず首を突っこんでくる』という理由で君にはその事実の一切を伏せていたそうだ。つまり、アリスを引き取ったのち、なにも知らない君たちにはすぐに帰ってもらう予定だったのだよ。任務を忠実にこなすだけならば、この依頼は危険なものではないからな」  あの時、アンバ山で真実を教えられたドンが全く動じていなかった理由が、やっと理解できた。  そして、ドンが今回の依頼をハナコに任せた理由も。 「まあ、彼にとってもわたしにとっても、君たちがアンバ山へ辿り着くとは思ってもみなかったのは事実だ。ドン・イェンロンは言ったよ、『真実を知ったうちの跳ねっ返りは、アリスをそのままにして帰ることはないでしょう。だから、あなたの目でハナコ・プランバーゴを見極めてほしい』とな。それで、真実を知った君たちの意思を確認させてもらうため、わたしもともに引き渡しの場所へとやってきたのだ」  すべて、ドンとムラトの掌の上だったってことか。 「……それで、あたしたちにも協力しろってわけ?」 「いや、協力は不要だ。手はずはすべて我々で整えてある。わたしを解放したのちに君たちが選ぶことができる行動は二つに一つだ。即ち、この場を立ち去り自由の身を謳歌するか、わたしとともに本部へ赴き、《マッド・ハッター》破壊の見届け人になるか。さあ、どうする?」  考えるまでもない。 「決まってるだろ、《赤い鷹》の本部へ行く」  ハナコの決意に、ムラトが笑んだ。
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