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「あの、わたしはもうすぐ死んでしまうんですか?」
アリスが唐突に口を開いた。
それをうけて、ヒサトが不気味な笑みを浮かべる。
「やはり、そこが不安かね?」
「はい……」
「安心しなさい。きみは他の〈干渉者〉とはちがう」
「ちがう?」
「そうだ。幾度も遺伝子操作をくわえた結果、きみは完璧な〈干渉者〉として産まれた十三番目のアリスだ。遺伝子操作によって、〈干渉瘤〉の破裂の可能性を著しく低めることに成功したのが君なのだよ。きみにも分かるように言うならば、〈干渉瘤〉の皮膜の厚みを37パーセント増大させ、さらにはそれを硬膜化することに成功してね。そしてその副産物として、きみはオリジナルの〈干渉者〉の数十倍もの〈干渉力〉までをも手に入れたのだ。いまはまだ〈干渉力〉を使用することによる負担があるが、それもじきに安定してゆくだろう。きみは奇跡の存在だ。科学の中にすら、奇跡は起こりうるものなのだな」
自分の功績に陶酔しているような表情で語るヒサトの言葉の、ほとんどの意味はよく分からなかったが、それでもアリスが特別な存在で、ヒサトがアリスのことをとても大事にしているのだということは分かった。
正直、ヒサト・メンゲレに対しての不信感は未だにぬぐい去れないが、アリスに関する事柄だけは信じても良さそうだ。
そう思い、〈帽子〉を装着する意思をあらためてアリスに確認すると、アリスはゆっくりと頷き、ヒサトはそれがさも当然の選択だと言わんばかりに〈帽子〉を少女の小さな頭に被らせた。すると、〈帽子〉からいくつかの機械音が聞こえ、アリスが一瞬つらそうな顔になる。
「少しきついかもしれないが、それは容易にはずれてしまわぬように内部のエアクッションの空気圧が自動で調節されるようになっているためだ。すぐに慣れるだろうから、しばらく我慢してくれ」
ヒサトが言い、アリスがしおらしく頷くと、
「準備が整いました」
と、若い兵士が伝えに来た。
それをうけて、ムラトが、
「さて、それでは行こうか。すべてを終わらせに」
部屋の一同を見渡して言った。
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