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ピクシーの足元にはガリイと二人の兵士が倒れ、血の海を作り出していた。
「あんたは……死んだはずだろ?」
ハナコの額に、一筋の汗が流れた。
――ありえない。
『言ったはずだ。ピクシーは完成した、と』
「なぜだ! なぜ、お前がここにいる!」
ヒサトが悲鳴にも似た大声を上げる。
『……久しぶりだな、ヒサト』
「ピクシーは、とっくに〈活動限界〉を過ぎているはずだ」
『〈活動限界〉を突破したんだよ、ワシは』
「あり得ない。それを引き伸ばすことなどできんと、お前自身が結論を出したはずだ、シロー」
『そう。その通りだ。だがお前たちに裏切られ研究所を放逐されてからも、ずっと、ずっと、ワシは人目を忍んでピクシーを研究しつづけていたんだよ、九番街でな」
「貴様、九番街に潜伏していたのか」
『あの街はなにかと都合がいい。金次第でなんでも手に入るからな。おかげでピクシーの最大の問題点である〈活動限界〉を突破することができた』
「信じられん。一体、どうやって……?」
絶句するヒサトの眼前で、ピクシーは右手に握るナイフの柄で自らの頭をコツコツと叩いた。
『脳がダメになるのなら、そのたびに頭部を入れ替えればいい。それがワシが出した結論だ』
「頭部だけを変える、だと?」
『そうだ。完成された胴体部はいくらでも使いまわしが効く。頭部のストックさえあれば、ピクシーの〈活動限界〉はいくらでも伸ばせるんだよ』
「貴様……まさか、アリスの頭部を狙ってるのか?」
『そうだ。最強の肉体と最強の頭部が揃えば、ピクシーは更なる高みに至る』
「イカレてる……」
思わず漏れたハナコの言葉を鼻で笑い、
『なんとでも言え。さあ、分かったなら、そこをどけ』
と、シローが言った。
「どくわけねえだろ」
『……残念だ。お前は殺したくないんだがな』
言って、ピクシーが戦闘態勢に入った。
構えるハナコの横に、マクブライトとトキオが無言のまま並ぶ。
『やれやれ、お前らでは勝てないのは百も承知だろうに』
確かに勝てる気はしない。だが、やるしかない。
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