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先に動いたのは、ピクシーだった。
ガード越しにピクシーの拳を喰らったマクブライトの体が瓦礫まで吹き飛ばされ、崩れた瓦礫の底に埋まる。
「うわあああ!」
情けない声を上げながらも、トキオがピクシーに殴りかかった。ピクシーは避けるそぶりすら見せずにトキオの拳を胸で受けた。当たり前だが、なんのダメージも受けていないようだった。
「うう、くそお……」
無力に喘ぐトキオの首を左手で掴み、軽々と持ち上げるピクシー。その足を目がけてハナコは水面蹴りを繰り出した。
『……無駄だと言っただろう』
まるでビクともしないピクシーがあきれ声で言って、ハナコを目がけて右手を振り上げた。
と、その時、風切り音とともにピクシーの左腕を矢が貫き、緩んだ手からトキオが滑り落ちた。
「やった! 当たったぞ、父ちゃん!」
矢の飛んできた方、瓦礫の上にはコブシ一家の姿があった。
「ハッハッハ、よくやった」
言って、トラマツが瓦礫から飛び降りてピクシーに対峙する。
「くそ、次から次へと、なんなんだよ、一体」
ハナコの悪態に、
「ウチの弟の鼻から逃げられると思った?」
と、同じく瓦礫から飛び降りてきたリンが笑う。
「この黒ずくめとあっちの軍人を殺っちまえば、あのアリスとかいうガキはおれたちのものだ。気を抜くなよ、リン」
「分かってるわよ、パパ」
『コブシ一家か……相変わらず、鬱陶しい奴らだ』
「ああん? なんでおれのことを知っていやがる?」
訝しむトラマツに、
「父ちゃん、よくわからねえが、そいつからガンズのジジイの臭いがするぜ」
と、ゴエモンが言った。
「ガンズ・トヤマ……? あんた、ガンズだったのか」
驚くハナコに、
『今さら知ったところでどうなる?』
と言い放ち、シロー・メンゲレ――ガンズ・トヤマは嗤った。
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