50:決着

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『少しばかりのダメージはあるが、問題はなさそうだ』 「マジかよ……」  戦慄する心をおさえて構えるハナコの横にリンが立ち、木刀を構える。 「まったく、なんであんたと組まなきゃならないのよ」 「こっちのセリフだ」 「おいおい、仲良くしろ。すぐに家族になるんだからよ」  トラマツが笑えないジョークを飛ばし、落ちている岩を〈射出機能内蔵義手〉に装着すると同時に、ゴエモンがピクシーにボウガンを撃った。 『ナメるな、小僧』  こともなげにキャッチした矢を真っ二つに割るピクシー。 「お、おれだって戦力になれるぜ」  瓦礫から飛び降りて来たゴエモンが言う。 「……なんでもいい。手を貸して」  プライドなんかどうでもいい、とにかくアリスを絶対に救い出してみせる。コブシ一家とのことは、それからだ。 「ネエさん!」  ムラトに肩を貸して起き上がらせていたトキオが叫ぶ。 「ネロが、逃げてます!」  振り向いたハナコの視線の先には、アリスの手を無理矢理に引いて逃げてゆくネロの姿。 「くそっ!」  ネロを追おうとしたハナコを、ピクシーが高速で追い越して行った。 「ヤツの弱点は、昔と構造が一緒ならば首の後ろのチューブだ……あれをすべて切り離せば、ヤツは止まる」  息も絶え絶えに言ったムラトの体から力が抜ける。 「ネ、ネエさん、どうします?」 「……あんたは、ジイさんをお願い」  トキオにこの場を頼み、ハナコはすでに先を行くコブシ一家の後を追った。  両側に瓦礫が堆く積もる迷路のような道を抜けた先は、円形の広場のようになっていた。その奥には、盾にしたアリスのこめかみに銃を当てたネロ、対峙して仁王立ちするピクシー、更にその後ろからにじり寄るコブシ一家が見えた。 『分かっていないのか? お前の仲間はもうひとり残らずいないようだぞ』 「おれはやり遂げるだけだ。それが死んでいった仲間たちへの弔いにもなる」 『……お前の目的はわしと同じだろう。ならば、組んでやってもいいが?』 「ふざけるな。お前もおれたちの敵だ。お前には大勢の仲間を殺されている」  ネロが、銃をピクシーに向ける。 「まずいぞ!」  トラマツの声とともに銃声が響き、咄嗟に身をかがめていたハナコの目の前で、ピクシーが恐るべき速度で弾丸を避ける光景が繰り広げられた。  弾丸が尽きたネロの拳銃から、カチッ、カチッ、と引き金を引く音が虚しく響く。
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