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「ここで終わるわけにはいかないんだ」
拳銃とアリスを放り投げ、ネロはコンバットナイフを構えた。
『哀れだな。引導を渡してやる』
「待て待てコラ、お前らはおれさまたちの獲物だぜ。やれ!」
両者に割って入り、トラマツが吠え、ピクシー、ネロ、コブシ一家の大乱戦が始まった。
「アリス!」
ハナコはアリスに駆け寄り、抱きかかえて大乱戦から距離を取った。
「大丈夫か?」
無言のままうなずくアリスを後ろにやり、ハナコは考えた。ピクシーは強い。それは紛れもない事実だ。だがムラトの言葉を信じるなら、背面のチューブさえ切断できれば勝てるはずだ。ピクシーになにか弱点や隙があれば……
ハナコが思考を巡らせているあいだにも、目の前では戦いが続いていた。トラマツの拳もリンの木刀もネロのコンバットナイフもいとも容易く避けてゆくピクシー。その最中、背後からにじり寄ったゴエモンが腰にタックルをかました。だがビクともしないピクシーは、ゴエモンのリーゼントを鷲掴みにして軽々と持ち上げ、背中から地面にたたきつけた。
寝ぼけたヒキガエルのような声を出し、白目をむくゴエモン。
「クソヤロー!」
弟をやられ、キレたリンが感情のままにピクシーの右肩に振り下ろした木刀が折れ、無情にも繰り出されたピクシーの蹴りで吹き飛んだリンを、トラマツが受け止めた。
「本当にバケモノのようだな……」
トラマツがニヤリと笑う。
『なにがおかしい?』
「存分にコレが使えるのが楽しみでな」
リンを地面に寝かせ、ゆっくりと立ち上がったトラマツが義手を撫でながら言う。
『言っておくが、正面からの攻撃を喰らうほど、ピクシーはノロマじゃないぞ』
勝ち誇る隙だらけの背中にネロのコンバットナイフを突き立てられたピクシーがよろめいた。そのままピクシーの膝裏に蹴りを入れて片膝をつかせたネロが、
「撃て!」
と、トラマツに叫んだ。
突然の命令に驚きながらもトラマツが放った岩が命中して吹き飛んだピクシーは、廃屋にぶち当たって崩壊する瓦礫に埋もれた。
「これがおれさまの〈射出機能内蔵義手〉の力よ! バケモノなんか目じゃねえ」トラマツがカカカと笑い、ネロを睨みつけて「あとはお前だけだな、軍人野郎」と威嚇した。
「まだだ!」
ハナコの大声もむなしく、廃屋から飛び出してきたピクシーが、慌てて防御するトラマツの義手に連打を喰らわせた。強烈な打撃を受け、みるみるうちにトラマツの義手がグチャグチャになってゆく。
「うおおおお!」
『さっきのお返しだ』
ピクシーが掌底を叩きこみ、耐えていたトラマツが瓦礫の山まで飛ばされ、そのまま地べたに突っ伏した。
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