46人が本棚に入れています
本棚に追加
『さて、あとは軍人野郎とハナコだけだな』
ピクシーのマスクから蒸気が噴き出る。
「この道の終わりが、こんなことであってたまるか!」
ふたたびコンバットナイフを構えるネロの横に並び、ハナコも特殊警棒を構えた。
「気に食わないけど、今だけ手を組めば、ピクシーを倒せるかもしれない。あんたとの決着はそのあとだ」
ピクシーに聞こえないよう、小声でネロに言うハナコ。
「勝算はあるのか?」
「アイツは、首のところのチューブが弱点みたい。どうにかして切り離したら、動かなくなるんだとよ」
「……低すぎる勝算だな」
ほとんど絶望的な勝算をネロが笑う。
「やるしかねえだろ」
『何度やれば気が済む?』
「てめえを倒すまでだ!」
怒りに任せて振り下ろされたハナコの特殊警棒を避け、ハナコに殴りかかろうとするピクシーの脇腹に、ネロのコンバットナイフが深々と突き刺さる。
『即席のチームで何ができる?』
コンバットナイフをネロから取り上げ、そのまま超スピードでネロの腹に刺すピクシー。
「う……ぐぐ……」
膝をつき、そのままネロは倒れこんだ。
完全に万事休すだ。
『これで、ひとりだな、ハナコ』
「名前で呼ぶんじゃねえ!」
絶望的状況のなか、それでも諦めないハナコの連撃をまるで楽しむかのように躱してゆくピクシー。ハナコの隙をつき、ピクシーが拳を振り上げた――
――殺られる!
その刹那、アリスが首から下げた笑い袋をギュッと握りしめた。
「アーハッハッハッハ!」
ピクシーの動きがピクリと止まる。
『なんだ、どうしたピクシー?』
シローが焦る。
これだ、これがピクシーの隙だ。
「アリス、笑い袋を鳴らし続けろ!」
アリスに言って、ハナコはピクシーの背後に回り込んだ。
「アーハッハッハッハ!」
ハナコの命令どおり、笑い袋を鳴らし続けるアリス。
「オ……オオ……」
両手を前に突き出し、笑い袋へとピクシーが向かいだした。
『ピクシー、何故だ? なぜわしの言うことを聞かぬ?』
シローの焦る声がスピーカー越しに虚しく響く。
ハナコはピクシーの背中に飛び乗り、チューブを引きちぎろうとした。だが、チューブは固く、とても簡単に外せそうにはなかった。
「アーハッハッハッハ!」
なおも響くアリスの笑い袋の笑い声に引き寄せられてゆくピクシー。
このままでは、ピクシーがアリスにたどり着いてしまう。
「ハナコ!」
声に振り向くと、そこにマクブライトがいた。
「これを使え」
言って、マクブライトが放り投げてきたものを受け取るハナコ。
見ると、それは手榴弾だった。
ハナコは手榴弾のピンを抜いてチューブの間に挟み込み、飛び降りてアリスのもとへと走った。
アリスを抱きかかえると同時に背後で爆発が起き、首から上が無くなったピクシーが大の字になって倒れる。
最初のコメントを投稿しよう!