鍵探し

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「沙月ちゃん……?」 「私、麻弥だけは絶対に守ってあげる。何があっても、絶対に」  今はこの学校内に、麻弥の味方は誰一人いない。クラスメイトは気弱な彼女を玩具のように扱っていたし、唯一の味方ともいえる杏奈は行方不明。おまけに、あの黒いヤツの正体が杏奈である可能性が浮上した。  彼女を守ってあげられるのは私だけ。  他の誰かはどうでもいい。彼女だけは、私がこの手で守るの。 「のんびりしてる暇はないわね。ほら、行きましょう。早く鍵を見つけないと、他の人に取られちゃう」 「……うん」  差し出した手を、麻弥は不安げな面持ちで取った。 「……あ」 「どうかしたの、麻弥?」 「あそこ……なんか、ある」  歩き出した時、麻弥が私の手を引いて指を指した。そこは、三階の女子トイレだった。扉付近に何かが落ちている。麻弥を背後に庇いながら近づいてそれを見れば、上履きと生徒手帳だった。 「誰のだろう……?」  危機的状況にあるのに、私は冷静だった。まるで、ゲームの中の登場人物になったみたい。私は主人公で、脱出の手がかりを手に入れて無事に生き残る。麻弥と共に、絶対に。  私は生徒手帳を確認しようとした。だが、それよりももっと目を惹く物がそこにはあった。  小さなトイレの奥、窓の下辺りに何か光るものがある。それが何かを確認するまでもなかった。  鍵だ。  探し求めていた鍵があった!  私は生徒手帳を放り、欲に駆られた獣の如く鍵を手に取った。キラリと鈍く銀色に光る小さな鍵だった。これが何の鍵なんて考える余裕などない。これを手に取った私は、この馬鹿げたゲームの勝者なのだ。  鍵を見つけた今、だいぶ余裕が生まれて「呆気ないな」とほくそ笑んでしまう。とにかく、これで麻弥も私も助かるのだ。嬉々として麻弥に報告しようとした時、私はふと一番奥の個室に目が留まる。 「え……?」
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