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「鍵ヲ見ツケナケレバ、死ヌ。鍵ハ一ツダケ。手ニシタ者ダケガ、外ニ出ラレル」
「はぁ?何言ってんだコスプレ野郎」
「中二病ってやつ~?」
無機質に告げる黒いヤツに、伊藤と咲坂が突っかかる。同じようにして男子どもも茶化すようにヤジを飛ばすが、黒い何かは一切動じない。じっと目の前の委員長を見つめたままだ。
駄目だ。あれは危険だ。
バクバクと心臓が音を立てて私を急かす。早く、ここから逃げなければ。
この場から逃走したい思いに駆られた私は、せめて親友の麻弥を連れて逃げようと彼女に視線を送ろうとした。
だが、そこに居るはずの麻弥がいない。いじめられっ子である彼女の数少ない味方である杏奈の姿も同様、この場から消えている。
……こんな時に、何処に行ったのだろう。二人共、先生の言う事は聞くタイプだったのに。
「なぁ~、俺らをここに待機させたのお前なの?」
「ソウダ」
「ほーん。とりあえず、帰りたいから解放してくんね?質の悪い演出とか、もうどーでもいいからさぁ」
チャラ男の米良がうんざりした様子で鞄を背負う。相変わらずそこに佇んだままの黒い何かは、気味の悪い声で続けた。
「君タチハココカラ出ラレナイ。鍵ヲ見ツケタ者ノミ」
「うっざいなぁ。そんなつまんねぇ遊びいらねぇって」
「そーそー。今時こんなの流行んないよ?頭大丈夫?」
「こんなんドラマだけで充分だって~」
先程まで異常事態に慌てていたくせに、クラスメイトたちはケラケラと笑いながら黒い何かを鼻で笑う。
どうやら、まだドッキリや悪戯の類だと思っているらしい。かくいう私もその一人だが、その黒い何かにはこれ以上関わってはいけない気がした。
下手に抵抗すれば、殺される。
ホラー小説やデスゲームの展開にありがちなヤツだ。
大抵、こういうのは見せしめとして誰かが――……
「フム、信ジラレナイトイウコトカ。馬鹿ドモニハ、実際ニ見セタ方ガ早ソウダナ」
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