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私も皆と同様に教室を飛び出して、無我夢中で廊下を駆けた。みんなもきっと全力で走り、血眼となって鍵を探しているに違いない。
鍵を見つける。
至極単純な、命を賭けた戦いが始まってしまった。
私は、ひとまずあの黒い何かから逃げたかった。誰も感じていなかったようだが、あれからは筆舌に尽くしがたい恐怖を感じた。
だから、開いていた生物準備室に駆け込み、鍵をかけた。
……どうする。鍵を探すか?
その前に、彼女はどこへ行ったのだろう……?あの子は、一人じゃ絶対に逃げ切れない。杏奈が傍に居ればいいが、万が一、麻弥だけで行動していたとしたら危険だ。
あの子は、私が守ってやらなくちゃ。探さないと。
こんな所で、休憩している暇などない。
「……っ、……こ……」
「え?」
その時、バタバタと忙しない足音と共に、誰かの荒い息遣いが聞こえた。同じように飛び出したクラスメイトの一人だろうか。はたまた、さっきの黒いヤツ……?
だが、すぐさま声の主は分かった。誰よりも聞いた声だったからだ。
「麻弥!」
思い切り扉を開けて大声を上げる。そうすれば、丁度通りかかった麻弥が涙目で肩を揺らした。
「沙月ちゃん……」
「麻弥、無事よね⁉」
「う、うん……!」
通学用のリュックの紐をキュッと握り、麻弥は涙を零しながら頷いた。ひとまず、探していた麻弥に怪我がないことを確認して安堵する。
「麻弥、今の状況は把握してる?」
「うん……なんか、変な放送みたいの聞こえてた」
「放送?まぁいっか……というか、こんな時にどこ行ってたのよ」
「えっと……トイレ行ってて……そしたら、何か変声機使った声みたいなのが鍵がどうたらこうたらって……」
つまりは、私たちと同じわけだ。教室外に居た麻弥まで巻き込むだなんて、質の悪い野郎だ。他のクラスの生徒は一人も見当たらず、見たところ馬鹿馬鹿しいデスゲームまがいのこれに巻き込まれたのは、私たちのクラスだけらしい。
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