鍵探し

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「さ、沙月ちゃん……!」 「大丈夫、だいじょうぶだよ……!私が、何とかするから!」  この手は絶対に離さない。なんとしてでも、私が鍵を見つけて麻弥と共に外に出てみせる。誰よりも早く見つけて、日常に帰ってやる。あんなクズどもに負けてたまるか。  死に物狂いで走った。その途中、私たちと同じように何者かに追われているであろうクラスメイトの悲鳴が聞こえる。ついでに、何かがひしゃげるような音や、液体のようなものが飛び散る音まで。  私たちは背後に迫る異形から逃げながら、廊下で転がるかつてクラスメイトだったものを飛び越えていく。 咲坂も米良も、眼球が零れ出そうなくらい目を見開いたまま絶命していた。腸が抉られていたり、胸元を何かで突き刺されていたり……。たった今遭遇した伊藤に至っては、壁が崩壊するほど顔面をそこに打ち付けられたらしく、壁に埋め込まれる形で死んでいた。  それを見て、背後で麻弥が嗚咽を零す。私は情けない声をあげないように必死で唇を噛んだ。喉元に迫りくる酸味を無理に飲み込む。麻弥が足を止めぬように、何度も強く手を引いて、階段を駆け上がった。  走って、走って。  あの化け物にもクラスメイトにも負けるわけにはいかないの。  三階にある特別教室の前に辿り着く頃には、化け物の足音も誰かの悲鳴も何も聞こえなくなっていた。 「……いなく、なった?」  ぜえはあと涙ながらに息を整えて、麻弥が震えた声で問う。彼女を落ち着かせるように背を擦りながら、私は階段の方をそっと覗き込んだ。 「なんとか大丈夫そう。誰も……来てない」 「よかったぁ……」  初めて麻弥が安堵の笑みを見せた。守りたくなるようなその微笑に、私は無意識に彼女を抱きしめていた。
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