新参者のあいつ

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俺らにはどうしても負けたくない奴がいるんだ。 どんな奴かって?奴はこの世界に入ってまだ間もない新参者。なのに人気は俺らより全然ある。俺らの方が数も多いし、長くこの世界にいるっていうのに。参っちゃうよほんと。 電車の中でだって視線が行くのはいつもあいつ。俺らは隅っこで小さく眠っているんだ。あいつばっか注目を浴びている。たまに俺らの方に視線が来たかと思ったら、パタリと駅についてしまう。ほんと勘弁してくれよ。 この前だって俺らの大好きな百合ちゃんと5時間も部屋で見つめあっていたんだぜ!?羨ましいったらありゃしないよ!百合ちゃん、最近全然俺らと関わってくれないからな。いっつもあいつばっか。どんな時でもあいつと一緒に居たがるんだ。 昔はそんな事なかったのにな。 親友よりも一緒にいる時間は長かったし、色んな所に一緒に行ったよな。まあ、移動の時間しか目は合わないんだけどね。それでも。それでも楽しかったな。 そりゃ、あいつの方が話の引き出しは多いし、特技だって沢山持ち合わせている。俺ら全員の力を合わせても、敵わないんじゃないかってくらい沢山の事ができるしさ。 それに俺らみたいに分かりづらい事滅多に言わないしさ。正直凄い奴だよ。あいつ。 でも、でもさ。なんかさ。あいつと関わり過ぎて、百合ちゃん、疲れてるように見えるんだ。百合ちゃんが笑ってたり楽しんでたり、感情が揺れ動いてる瞬間が減ってるように感じちゃうんだ。だってあいつと関わってる時の百合ちゃん、たまにちょっとニヤつくくらいで他はずっと無表情だぜ? だからさ、俺ら、負けられないんだ。そりゃ一緒にいられる時間は圧倒的に少ないかもしれないよ?けどさ。一緒にいられた時、百合ちゃんを思いっきり楽しませられるように!あいつなんか忘れさせられるように、絶対独り占めしてやる。そう決めてんだ。 そしてこれは予行練習。百合ちゃんとの時間をあいつよりも楽しいものにするために。ちょっと君で試してみたんだ。どうだった?もしかしたら君はあいつを通して俺たちと触れ合ってるかもしれないけど...少しは楽しんでもらえたかな?
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