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お前の名前はニノミヤワタルだと言われ続けてそうなのかと思い込んで見る。
自分の記憶が上書きされる感覚しかない。
「二宮さん、俺がわかりますか?」
毎日確認される。
「カガワリク」
俺は教えられた名前を言う。
自分の過去の記憶が浮上してこない。
「病院に行ってみましょうか、二宮さん」
そう言われても自分で判断できない。
「…昔のことが、思い出せない」
「今の現状はわかりますか?」
俺は弱々しく首をふる。
「今わかっていることは」
カガワさんがゆっくり近づいてきた。これから起きることへの期待に口から唾液がこぼれる。
「セックスしたいパブロフの犬状態ですね」
失望の色をみせながらカガワさんが言う。
自分でもそう思う。
気がつくと下の密があふれているそれを握っている。自分の意思ではどうにもならない。
肩を落としているカガワさんの横ではしたない醜態をさらしながらそれでも快感を追い求めて俺は手を止めることができなかった。
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