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「やっぱ返すわ」 またふわふわと宙に浮く感覚がして見覚えのある部屋に連れて行かれる。 「商品としてはいいほうだと思うぞ。何もわかってないから情報が漏れる心配はないし感度良好だ。相手を選べば大金が手に入るだろう」 この声はたしかカガワリク。 裸のまま乱暴にソファに投げられたような気がした。会話はできないが聴覚だけ残っていて、音だけは聞こえる。 「勝手ですね。はじめは俺を責めておいて今度は後始末を押し付けるんですか」 この声はカミヤマユウ。 「お手上げだ。このままテクノブレイクで死ぬかもしれない。俺の部屋で死人を出したくないし。白目剥いてずっとヤッてるんだぞ。ホラー映画みたいで耐えられん」 「わかりました。それを先生に報告して帰ってください」 「随分他人行儀な話しぶりだな、佑」 俺を運んできたカガワはほかの部屋に入っていく。 カミヤマは俺に近づいて俺の髪をつかんだ。 「客って言ってもな…」 そう呟いて何か考えているようだった。 となりで商品用に調教されている人間と見比べてつかんでいた手を離す。 「あなたの名前は?」 「…‥」 聞こえているし名前くらいわかるようになったけど答えが口から出てこなかった。 「廃人は処分対象なんだけど」 狂ってなんかいない。意識はだんだん戻ってきている。 だがそれを伝えることができない。
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