後ろの理解者・ep3.5

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 女王が猛るまさにその時、宿主(器)の紫音が不意につぶやいた。 「近代五種って面白いな、内容入って来ないけど。でも糞ウイルスさえなければ、もっと早く見られたのよね。そうだ、ウイルスにも王様や女王様っているのかな。いてもどうせ、根性悪さが顔に出た場末のヨゴレキャラに違いないよね。あははっ」  あまりに黒い言葉に侍女Aは何度目かの硬直。片や女王はワナワナと震えた後、 「こ、この女ーーーっ!今すぐ重症化させてやろうか、オラーーーーッッ‼︎」 「お、おやめください女王様、てか重症化ってどんな…恐ろしい…」 「このバカ女の左目だけ、視力を100倍にしてやるのよ!うふふ、好きな近代五種も近代500種に見えるでしょうね。お得よね。ふふふふ!」 「…女王様。恐れながら右目が普通なら、言ってもせいぜい近代250種くらいかと」 ピシッ! 「あぅッ!」 ピシピシッ! 「あッ!うん…」 「まあ見てなさい。私は私のやり方で世界蔓延してやるわ。そのために、この女を感染源にしてまず日本を取るのよ。コロナが何よ!結局はおばあちゃんを襲って喜んでるだけの、特殊詐欺並の三流ウイルスじゃない。あろうことか、私が敬愛するグレートコメディアンまで…ふざけてんのかしら?」 「おやめください!コロナさんに気づかれたら我等は根絶やしに…それに、餌墓羅(エボラ)英血(H)(I)武威(V)あたりのならず者に目を付けられた日には…ぶるぶる。それでなくとも女王様のお名前のせいで、我等は二番煎じだのインスパイアだのと陰口を叩かれているのですよ」 「インスパイア上等、残るのはモロナよ!うははははー!」  もはや言葉もない侍女A。とはいえ女王の臣民思いの行動や、根底にある優しさには心酔している。  …だからこそ今、女王に伝えなくてはいけないことがある。それは重い事実。侍女Aは意を決して唇を噛みしめ、努めて冷静を装った。 「女王様、勢力拡大に関して重大な報告がございます」 「許可する。お言いなさい」 「先ほど感染源とおっしゃいましたが、実はこの女…」 「何よ。紫音はウイルスが効かない変態体質とでも言うの?」 「いいえ。変態は変態ですがそうではなく、この紫音…その…」 ピシピシッ! 「ああん、いやあン…」 「早く言いなさい!じれったいわね」 「はい。この女、実は………」 「だから何!」 「……友達がいないのでございます」 「ほほう。まあこのドス黒い性格ではな。で、私たちに何の関係が…ハッ!」 「お気づきですか。そうこの女、他人に接する機会が極端に少ない…つまり接触にしろエアロゾルにしろ、感染源としては全くもって使えないのでございます」 女王は半泣きで叫ぶ。 「ば、ば、ばかぁーーーー!なんでそんなぼっち女を器にしたのよ、この馬鹿ルス!(注・馬鹿者の意)、汚らわしい豚めッ!」 ピシピシッ! 「ああッ!私なんだか変なきもちに…じゅん、って…」 「どうすんのよこの閉鎖状況!飼い殺しじゃないの私たち」 「お言葉ですが、『自分に通じる気高さがある』と言ってこの女を器に定めたのは、女王様でございます」 「お言葉だわね!でもま、そんなこともあったかな…」 「性格の黒さや口の悪さは確かに似ていると、侍女Aも感じておりました」 ピシピシピシピシッ! 「あ、ああンッ!も、らめ…もっと…女王様あン!」    鞭打ちの痛みがナイスな方向に昇華して身悶える侍女Aを尻目に、諸奈女王は、今後の王国の道筋と戦略を固く心に誓っていた。 「次の器は、性格が素直で友達の多い女にしよう…」
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