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「奴ら、ネチネチと高齢者ばかり狙ったでしょう。それは姑息だと思わないの?侍女Aあなた」
「そ、そうでしょうか。人類をぶっ潰すのが我々の目的であり勝利…」
「違うッ!」
ピシピシッ!
「ああッ」
「いいこと?人間というのは私たちの器、乗り物にすぎないの。そこはわかるわね?」
「はい…」
「あなたは人間をぶっ潰すのが勝利みたいに言うけど、仮にそれが本当だとして、私たちが蔓延しすぎて人間が全滅したらどうするの?」
「気分爽快です。いや…あっ、あれれっ⁉︎」
「気づいたようね。人間がいなくなれば私たちの拠り所もなくなる。つまり人類の全滅は私たちの全滅。冬虫夏草や寄生蜂みたいなアナーキーなライフスタイルでは、数年で共倒れよ」
「なるほど…」
「それとも何?あなた、チャバネゴキブリとかハリガネムシ専門に感染したいの?あっ!ゴキブリに入ったらあなた、『侍女氏』ね。くすくす」
「テラり過ぎです女王様。ですが確かに、私は哺乳類の温かく柔らかい体が好きです。特に人間の女は甘い匂いがしてたまりません」
「うむ、良い変態だわ。つまり私たちは、人間に完全勝利するわけにはいかないのよ。かといって負けて駆除されるのもありえない。私はそのバランスにいつも悩んでいる。コロナやノロの馬鹿どもは配慮なしに突進するから、容赦なく嫌われて駆除されるのよ」
「なるほど…」
「それにね。私がコロナを許せないのには、もっと重大な理由があるの」
「差し支えなければお聞かせください。女王様」
「いいこと?私はね…」
女王が慈愛に満ちた表情を見せる。だが次の瞬間、全身全霊を込めて叫んだ。
「私はね‼︎おばあちゃんっ子なのよーーー‼︎」
脳天をハンマーで撃ち抜かれたように硬直する侍女A。次の言葉を発するまで、ゆうに45秒を要した。
「あ、あの女王様?本当にそれが理由で…」
ピシッ!
「あっ!」
ピシピシッ!
「ああッ!」
「いいこと侍女A。私の前で茂呂菜おばあさまの悪口は許さないわ」
「いえ悪口など…理由のアレさに驚いただけで」
ピシッ!
「あんッ!」
祖母への愛を公言し、優雅に鞭を振るう女王は神々しいほどに美しい。その姿を目の当たりにした侍女Aは、素直な感情を口にする。
「諸奈女王様…お姿もお心も美しい方。一生お慕い申し上げます」
「わかればいいのよ侍女A。今日もおさげが可愛いわ。お茶を持ってきてくれるかしら」
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