後ろの理解者・ep3.5

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 2人はお茶を飲みながらしみじみと話す。 「私はね、乱暴な奴らと違って人間をジャンジャン殺したい訳じゃないの。どちらかというと、器にした人間は健康でいて欲しい」 「そんな、お母さんみたいな願いは流石に無理です女王様。健康じゃない人間、つまり免疫力が落ちた人間こそが、我等の器になり得るのですから」 「まあね。この紫音という女、性格が真っ黒だと免疫力も弱いのかしらね。とはいえ簡単に死んでもらうわけにはいかないわ。じわじわと嬲り殺しに…うふふ、うふふふ」 「そこなんですよ女王様。我が王国の戦略なんですが…」 女王は侍女Aをギロリと一瞥する。 「何よあんた、私のやり方が気に食わないの?」 「いえ…ただ、呼吸障害や高熱、下痢や出血など華々しい戦果で名を挙げる他国に比べ、我が国は…地味というか…」 「だから何だってのよ!」 「…我が国の『左目だけ視力を良くする』っていう戦略は、果たして正しいのかどうか…」 ピシッ! 「あッ!ん」 「侍女A!あなた、左目だけ視力が良くなるとどれほど鬱陶しいか、わかっているの?」 「はい…え?」 「バランス(わる)ッ!激悪(げきわる)ゥ!」 「それはそうですが…」 「それにね、実は左目が良くなると同時に、右目は調子悪くなっていくのよ。主にかすみ目や老眼ね。あ、ただの老化じゃないわよ。感染した人間は確実に蝕まれていくけど、それが直接の死因にはならないワケ。わーる?あーしが言ってること」 「いえ、突然ギャル口調なのも含めてよくわかりません」 「いわば、柔らかな苦痛。美しき病巣。これが私の能力『アイ・オブ・ザ・タイガー』なのよ!虎視眈眈だけにね。うははは」  侍女Aはゆっくりと100回殴られたような、柔らかな苦痛の衝撃で絶句する。 「そんなんじゃ、蔓延なんて…」 ピシッ! 「ああん!」 「何言ってるの?肺炎や出血なんて激症、たちどころにバレてワクチン投与&駆除でしょ。でもね、この症状なら当面はウイルスのせいとは思われない」 「確かに」 「いいこと、よくお聞き。右目の健康が損なわれて免疫力が落ちるところに、私たちが付け入る隙ができるのよ。人体的には差し引きゼロ。なのに何だかバランス悪くて生活しにくいなー…っていう困った感じ?これってね、もうね、『絶妙にアンビバレンツな嫌がらせの具現化』と称賛されていいと思うんだ私。これを素敵な感染と言わずして一体何を…あーっ!侍女A、なーに寝てんのよあんた!」 ピシピシッ! 「あんんッ!くふぅ…」
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