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2人はお茶を飲みながらしみじみと話す。
「私はね、乱暴な奴らと違って人間をジャンジャン殺したい訳じゃないの。どちらかというと、器にした人間は健康でいて欲しい」
「そんな、お母さんみたいな願いは流石に無理です女王様。健康じゃない人間、つまり免疫力が落ちた人間こそが、我等の器になり得るのですから」
「まあね。この紫音という女、性格が真っ黒だと免疫力も弱いのかしらね。とはいえ簡単に死んでもらうわけにはいかないわ。じわじわと嬲り殺しに…うふふ、うふふふ」
「そこなんですよ女王様。我が王国の戦略なんですが…」
女王は侍女Aをギロリと一瞥する。
「何よあんた、私のやり方が気に食わないの?」
「いえ…ただ、呼吸障害や高熱、下痢や出血など華々しい戦果で名を挙げる他国に比べ、我が国は…地味というか…」
「だから何だってのよ!」
「…我が国の『左目だけ視力を良くする』っていう戦略は、果たして正しいのかどうか…」
ピシッ!
「あッ!ん」
「侍女A!あなた、左目だけ視力が良くなるとどれほど鬱陶しいか、わかっているの?」
「はい…え?」
「バランス悪ッ!激悪ゥ!」
「それはそうですが…」
「それにね、実は左目が良くなると同時に、右目は調子悪くなっていくのよ。主にかすみ目や老眼ね。あ、ただの老化じゃないわよ。感染した人間は確実に蝕まれていくけど、それが直接の死因にはならないワケ。わーる?あーしが言ってること」
「いえ、突然ギャル口調なのも含めてよくわかりません」
「いわば、柔らかな苦痛。美しき病巣。これが私の能力『アイ・オブ・ザ・タイガー』なのよ!虎視眈眈だけにね。うははは」
侍女Aはゆっくりと100回殴られたような、柔らかな苦痛の衝撃で絶句する。
「そんなんじゃ、蔓延なんて…」
ピシッ!
「ああん!」
「何言ってるの?肺炎や出血なんて激症、たちどころにバレてワクチン投与&駆除でしょ。でもね、この症状なら当面はウイルスのせいとは思われない」
「確かに」
「いいこと、よくお聞き。右目の健康が損なわれて免疫力が落ちるところに、私たちが付け入る隙ができるのよ。人体的には差し引きゼロ。なのに何だかバランス悪くて生活しにくいなー…っていう困った感じ?これってね、もうね、『絶妙にアンビバレンツな嫌がらせの具現化』と称賛されていいと思うんだ私。これを素敵な感染と言わずして一体何を…あーっ!侍女A、なーに寝てんのよあんた!」
ピシピシッ!
「あんんッ!くふぅ…」
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