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ただでさえ花粉にやられる季節だというのに、ろくに掃除もされていない体育館の舞台裏をひっくり返すだなんて、正気の沙汰じゃない。
「せんせー、埃だらけなんすけど」
2枚重ねのマスクの中から、不満をどっしり乗せて生徒会顧問の先生に訴えてやった。
「仕方ないだろ。ほぼ1年、誰も掃除しに来ないんだから」
「まめに風通せばいいんすよ。体育教官室はすぐそこにあるんだから、先生たちで週イチくらいでやってくれれば……」
「みんな忙しいんだから、そんなこと頼めないよ。お前頼んでくるか?」
そう言う先生は、なかなかイケメンのアラサーだ。顧問とはいえ若いから、職員室での立場は弱いほうなのだろう。
「……うっす。俺、もう卒業する身なんで。遠慮しまっす」
「はは。じゃあ榛名、あとは頼んだぞ」
先生は時計を見ながらあわただしく出て行った。
卒業式はもう少し先だが、テスト週間前日の今日、設営の下準備に取りかかるため、生徒会の男子メンツがここに集められたというわけだ。
卒業式の準備を自分でする、というのはなんとも妙な気持ちになるものだ。
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