榛名暁の場合

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  「やば、目、かゆ」 「ねーえハル先輩、のど飴いる?」 「カナちゃーん、てめえ正気か。このもやもやだらけのスペースで、俺にマスク取れとほざきやがりますか?」 「あ、ごめんなさい。尊敬するハル先輩を助けようと思ったんだけど」  てへっと笑うのは、同じ生徒会の後輩、月見里(やまなし)(かなめ)。 「お前ほんと口だけだな。ふつう、尊敬する相手にタメ口きくか」 「してるしてる。僕、飴とか舐めないんで。あげます」  カナはなめた態度ではあるが、俺のお気に入りののど飴を1本まるまるポンと手のひらの上にくれた。 「……俺、目かゆいって言ったのに、なんで飴なの」 「え? ハル先輩、どこからでも摂取できるのかと」 「てめえ、俺はれっきとした人間だぞ」 「それは知りませんでした」  言いながらカナは、狭いスペースから出て行った。  入れ替わるように、青い顔をした男がふらふらとやってくる。 「ああ。榛名ー。ここにいたー」 「常盤(ときわ)? どうしたんだよ」  常盤は、去年同じクラスだった友達だ。立ち寄るラーメン屋がことごとく同じという共通点から、俺たちはクラスが分かれてもたびたび遊ぶ間柄だった。 .
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