千歳原ひなたの場合

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生徒会室のドアが開く。A3のコピー用紙を抱えた汐乃と柊子ちゃんが入ってきて、コピー機に紙をセットする。 「ひなちゃんがひどーい! いじめるー!」 「穂摘ちゃんはかわいいからねー、いじめたくなるよねー」 「ひなた、コピーどんくらい終わったの」 「半分くらい」 「了解」 紙詰まりのエラー音を淡々と処理して、柊子ちゃんはボタンを操作する。コピー機の操作って、絶対才能が必要だと思う。紙が詰まってないのに紙詰まりのエラーですとか死ぬほど腹立つ。 わたしはコピーの終わった紙を出して、裁断機で両断していく。穂摘は汐乃にべったり張り付いてる。 「ひどいんですよひどいんですよ、ひなた先輩がいじめるんですよ」 「あらー、そうなの」 「あっ、ねえ、千紘先輩どうですか? 元気?」 「んー……」 ちらりと汐乃がこちらを見たので、いいよってうなずく。ちょっとだけ、気になるし。昨日の夜まで死ぬほどLINE来てたから。 「落ち込んでたよねー。男子の方、ちょこっと見ただけだけど」 「やっぱりー? 馬鹿だよねー、別れたの一週間前だよ」 「だって千紘先輩とひなた先輩仲良かったのに」 「そうだけど、んー、別に? だって千紘重くって。落ち込んでるのあっちだけでしょ」 「千紘先輩ってそうなんだー。ただの優しい人って思ってた」 「そう、ただの優しい人だったんだよ」 それが、キラキラしてた、と思う。でももうキラキラしてない。大好きだった。楽しかった。だから、なーに? 18歳の恋でしょ? 終わりがはやくったって、だから、なに。 「そんなことよりさー、暁くんのことどうするの。知らないよ、卒業するんだよ」 「そんなこと知ってますぅ」 「私もちょっと心配。告白した方がいいと思うな」 「えー、汐乃先輩までそんなこと言う……」 「どうして告白しないの? わたしだったら絶対もう告白してるけど。もう片思いして何年くらい?」 「何年はないですー……や、片思いもしてませんから。普通の先輩と後輩ですよー」 「その関係ってそんなに大事なの」 ああ、痛いとこ突いちゃった。穂摘がきゅっと顔をしかめた。わたしは言葉を続ける。
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