独りきりの 電話 は何処 1

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独りきりの 電話 は何処 1

「いやいやいや、いや。ない、ないでしょ。」 「いろいろ、ないでしょ。」 両方の手を 握りこんで、シオンは 思っ切り レンに唸った。 レンは、ダイニングチェアから 身動ぎもしない。 「イケメンにも、彼女が途切れるヒマって あるもんなんだ?!」 今度は、柔らかい笑いを レンは顔に作って シオンを ゆっくり 捉えた。 「大学出てから、彼女いないよ。だから、結婚もしてないよ、俺。」 その 思いがけない台詞に、目を瞬いた。が、静かに己れの目を すぅーっと細くした シオン。 「ーー レンて、もしかして…異性より同性が、、いいの?」 「なんで そうなるのかなあー。ただ、独りが長くなると 楽で良くて、こうなるんだけど。それじゃあ、いけないの?」 レンは相変わらずの笑顔で返した。 「そうなんだ?レンの場合、そりゃ、きっと一時だよね。その気になったら、いつでも結婚出来るもんね。そうだよね!」 「ふふ。どうかな? もう分からないな。 なんだか結婚も 面倒くさいなあって なってるんだよ。」 今度は、祭壇の方を遠く見ながら レンは まるで その棺に向かって囁くように言った。 一体、また何を言うのかと、イケメン従兄弟を訝しく それでいて、妙な感覚を思い出しながら シオンも 祭壇の方を見る。 しばし、シオンとレンの間に 無音が流れた。 少しして、 「ルイは。…ルイには、俺が大学に行ってから 会ってないんだよ。」 空になったコップを見た シオンに レンは そう言いながらも、気が付いたのだろう、 「そこの棚にある 飲み物とか、使っていいみたいだよ。コーヒーにする?」 シオンと同じように、空になったコップをまだ手にしていた レンは、ダイニングテーブルに コップを置いて 立つ空気をだした。 「あたしが、煎れるよ。レンも コーヒーでいいよね。」 「うん…。」 教えてもらった棚に 歩きながら、 「叔母さんが 電話で嘆いてた。レンは 大学に行って 全然帰らないって。東京の大学に 行かせるもんじゃないわって。本当に 大学いってる間、休みも 帰らなかったんだ!」 インスタントドリップ式のコーヒーを二つ 煎れながら シオンはレイの方に 言葉を投げる。 「そんなに 帰り辛かったの?」 「…」 「ここから、家から 逃げたかったんでしょ?」 レンの前に 煎れたてのコーヒーをシオンは置いて、自分のコーヒーを 座ってたダイニングチェアの前に置く。 香りを燻らせる湯気を 形よい鼻先に重ねて、 「… 俺は、それで 家を継ぐ気は ないって 親に 意思表示したんだよね。ルイには…悪いけど。」 表情がないままに レイは シオンが煎れた、コーヒーを 飲む。ちょっと口の端っこが 上がった。のを、シオンは確かめた。 「こんな言い方はないかもだけど、レンがいたら 会社、今もあったんじゃないの。」 やっぱり、レンの表情は、 変わらず、 「関係ないよ、きっと同じだよ。」 とレンの口もとは見えないが、言葉を重ねた。 「あたし、叔母さんとは 長いこと電話でしか話てないけど。会社なくなって、ルイも家を出たって聞いてた。ルイが 会社畳んで、家を出ていく気持ち、あたし すごく 解るよ。でも、それから レンもルイも 会ってなかったってこと?一回も?」 シオンは そこに矢継ぎ早に 言葉を繋ぐ、 「ねぇ、もしかして、ルイは叔母さんが 亡くなったこと 知らないの?」 なにげに コーヒーカップを持つ 感覚が 遠のく。レンは ちゃんと その感覚があるだろうか、シオンは ふと思った。 なぜなら レンのコーヒーカップを持つ 仕草が 硬くなった気がするのだ。 それでも 「したよ、連絡。」 「お袋の電話に 入ってたから、そこから掛けれたよ。留守電だ けどね。」 「でも、お袋が電話、持ってるってことも知らなかったな、俺。まあ、古い機種だから ルイの電話番号が生きてるか 分からないけど。」 そのレンの言葉で、シオンは 「それって、、叔母さんにも レンは 会ってなかったってこと?」 と、レンの目を見据える。 「親父の葬式から 会ってないよ。家に電話したのも 何回か、だな。」 今、シオンは自分の眉が 思いっ切り寄せられるのを 止めなかった。
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