緑の蛇は灰になる

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「えっ、嘘でしょ──」  太陽の元気にいっぱいに触れた庭のミニトマトたちが、真っ赤に熟し始めていた。  東京から遠く離れた田舎町に住む、洋子は小学2年生の翔平と暮らしていた。3月中旬まで夫の純一も一緒に暮らしていたのだが新天地。4月から東京への転勤が決まった。人事異動である。夫は慣れない東京で単身赴任。今頃、学生時代の独身生活を思い出しているころだろう。  28歳のときに純一と結婚。翌年妊娠し30歳で翔平を授かった。以降7年間、私は純一と翔平の3人で暮らしてきた。  翔平が成長し幼稚園に入園する頃、アウトドアが好きな夫は夏に私と翔平を山やキャンプに誘ってくれた。頂上まで登り、そこで3人で食べたカップラーメンがいかに美味しかったことか──。  純一は大きな会社に勤めているため、結婚当初は人事異動も覚悟はしていたのだが、全く異動の話が出ず、純一からこのことを聞くまですっかり忘れていた。まさかここに来て発令がなされるとは──。
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