決着は10秒後に

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「カズマ? 今、ちょっと会えない?」  それは七瀬からの急な電話だった。すっかり夜も更けて、睡魔に負けそうになっていたとき、七瀬から公園に呼び出された。俺は中学の頃から七瀬のことが好きだった。ただ、それをずっと伝えられないまま、無情にも時間だけが過ぎて行った。俺と楠木と七瀬は幼馴染で仲が良かったから、恋愛感情をさらけ出してしまうと、何かが壊れてしまうような気がしたからだ。  そんな中、七瀬からの急な電話。いつもよりトーンの落ちた七瀬の声に──もしかして、七瀬から告白されるんじゃ──と、期待に胸が膨らんだ。人の気配がまったくない深夜の公園のベンチに、俺と七瀬は腰掛けた。 「大学行ったら、みんなバラバラだね」 「そうだな。幼稚園から続いた腐れ縁も、ここで終わりだな」 「また遊んだりするかなぁ?」 「そりゃ遊ぶっしょ。別の大学に行ったからって、仲が悪くなるわけでもないし。自然に集まって、これまでと変わらない感じが続くんじゃね?」 「そうかなぁ──」  七瀬は夜空を見上げる。俺はその横顔を覗く。すると、大きな瞳から涙の雫がこぼれ落ちた。月明かりは、七瀬の涙を宝石のように輝かせた。 「ワタシ、楠木のことが、ずっと好きだったんだ。告白してもいいかな?」  七瀬自身も俺と同じく、幼馴染の関係を壊さないよう、気持ちに蓋をして生きてきたんだな。とめどなく流れる涙が、それを物語っている。やっぱり楠木が選ばれるのか──宿命のような結末に虚しさが押し寄せ、苦笑いするのが精一杯だった。 「後悔しないように、七瀬の気持ちを伝えろよ。俺は七瀬のこと、応援してるからさ!」  七瀬は小さく頷いたあと、今までに見たこともないほど激しく泣いた。ほんとは俺も泣きたかったけど、二人で泣くのはなんだか違う気がして、必死で涙をこらえた。
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