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びっくりしたびっくりしたびっくりした。
魔王が風呂場で溶けるって何。
ディブィに頼んで、溶けた魔王をベッドに運んでもらって・・・いや、これ溶けてんの?何?どうなってんの?
ペールオレンジよりはほんの少しだけ白みが強い、透き通るようだった肌は薄いピンク色に染まるどころが薄さのない鮮やかなピンク色になってしまった魔王がまるでスライムのようにベッドの上で溶けている。もちろん服なんて来てないから、巨大なピンク色のスライムが鎮座しているようにも見える。
「中庭のパムツリーの実を取ってきてください」
呆れたようにディブィが言うので、俺のせいじゃないと思う・・・と小さく抗議して、いややっぱり俺のせいか?とブツブツと一人で呟きながら中庭に出るための小ホールへと向かう。
途中ロティと会う。ロティはディブィの従者で俺と一緒にここへ攫われた子だ。今は六歳の女の子だ。後々我が嫁に・・・とディブィが鼻の下を伸ばしているのを見た事がある。
魔族というのは、変人が多いと思う。
一緒に行きたいと言うロティを連れてホールから中庭に出ると、ここはどれだけデカい城なんだと喚きたくなるほど中庭というか森である。
城はロの字に建っていて、その中心に中庭がある。まぁ、中庭って言うくらいだからそうなんだろうけど。で、その中庭の中心に森というかパムツリーの木が沢山あって、もう森じゃん。森だよ。
で、そのまわりに畑がある。・・・ある?なんで?いつの間に?
ついこの間見た時にはなかった畑がある。そしてそこには農作業する魔ぞ・・・魔族じゃない。あれは人族だ。
「シルベール、あれママに似てる・・・」
ロティが言うのもわかる。村一番の美女と謳われたロティの母親、サラに似てるのだ。そしてその傍らでゲラゲラと「てめぇ女なんだからもう少し声を抑えろや!」と俺が毎日のように怒鳴っていた俺の母親に似た女が俺の母親のようにゲラゲラと笑っていた。
「おや、シルベールじゃないか。久しぶりだねぇ」
母親に似た女は母親だった。サラもいた。
というか俺の村のあの時積み上げられていた大人たちが全員ここにいる。
どういう事なのか。
「魔族ってのはなんであんなにズボラなのかねぇ・・・」
そんなことを言う俺の母親の眉はしっかりと顰められていて、元々それほど美人でもないんだから顔を顰めるな!と言いたくなる。・・・が言えば鍬が飛んでくるのは目に見えているので、何も言わない。命は惜しむものだ。
「あの後、もう一度魔族の襲来があって、村の備蓄品やなんやらを全部持っていこうとするから、そんなことされちゃ王都へ収める上納金が無くなるじゃないか。それで文句を言ったら『お前達もいなくなれば上納金とやらも払う必要がなくなるんじゃないか』って言われてさぁ」
特にあの時死んだわけじゃなかったらしい。子どもだけが欲しかった魔族に捨て置かれただけの大人が、悲しみの中何とか生きて行こうと立ち上がりかけた時に魔族がまたやってきて、ようは『自分達で畑を耕すとか無理!お前らがやればいいと思う』となったらしい。
結果的には命も助かったし、作った野菜やらを魔族が食べる分だけ分ければいいのだと聞かされ、それが上納金より格段に安いこともあってここに来たのだと、その時の村長が教えてくれた。
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