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僕がその部屋を訪れた時にはもう既に部屋の中には死体一人すら残っていなかった。
部屋の壁も凹んでいて、爆発に対応させた頑丈な部屋の壁でも凹んでしまうぐらいに威力のある爆弾だったんだなとそう関心をした。
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「雪斗(ゆきと)様、お願いされていたお仕事は全て完璧にこなさせていただきました。」
僕が関心をしていると後ろから使用人のひとりが声をかけてきたので僕は振り返った。
「ああ、真澄(ますみ)。よくやった。
お前は本当に仕事の出来る男だな。」
僕がそう褒めると真澄はお褒めに預かり光栄ですと頭を下げた。
本当によく出来た使用人だ。
僕は使用人の名前を中々覚えられるほうではないのだけれども真澄は本当に出来のいい使用人だから名前を覚えている。
「………雪斗様、ようやく長年の望みが叶うのですね。」
真澄はしみじみとしたようにそう呟いた。
真澄は僕の有能な使用人であり、一番の理解者である。
なぜなら真澄自身、たった一人の想い人を長年監禁しているからだ。
僕は十年前に偶然その事実を知ってしまった。その時に僕は真澄から監禁の事実を誰にも話さない代わりに取引を提案された。
その取引は今も続いている。
真澄はどんなに自らの手を汚すことであれ、僕に絶対の服従をすると誓った。
今回彼女を誘拐するように男たちを誘導したのも、彼女を閉じ込める部屋を作ったのも、男たちに彼女になら何をしてもいいとそう伝えたのも全て真澄だ。
勿論僕の理解者であるため手伝いをする使用人は他にもいたけれど。
今回の話を警察に突き出そうとした裏切り者を全員始末したのも全て真澄だ。
真澄自身の手でやったとは限らないけれど。
真澄は自分の手が汚れることよりもたった一人の想い人と離れるほうが辛いのだろう。
僕もそうだ。自分の手がいくら汚れてもいい。何をしたっていい。
それよりもお兄ちゃんが誰かのものでいるほうがよっぽど辛いし痛い。
「…やっとだよ。
お兄ちゃんが、やっと僕のものになる…」
だけれどそんな辛い気持ちからももうお別れだ。これからは僕だけのお兄ちゃんになるんだから。
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