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呼び声
小さい頃はよくどこかから自分の名前を呼ぶ声が聞こえていた。
家の中で呼ばれたけれど家族全員まだ寝ている、なんてこともあった。
基本的に、今は亡きお婆ちゃんのような対象を可愛がるときに出る高めの声。
それが私の名前を呼んでいた。
歳を取るにつれて聞こえなくなっていた。
しかしつい最近。
と言っても高校卒業少し前の下校時。
私はマンションに着き、エレベーターで一人壁に背中を預けて目的の階に着くのを待っていた。
2階から3階の表示に変わった頃、自分の左斜め上から名前を呼ばれた。
聞き覚えの無い低い男の声で、はっきりと。
その瞬間ぞわっと悪寒が走り、一刻も早く帰りたかった。
自分の階に着くのがとても長く感じた。
到着すると即行で降りて帰宅した。
声がした方を見る勇気は無かった。
ただそれだけの短い時間だったが、何故かとても怖かった。
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