記憶にあるだけ

こんな時間に

一時期、寝る前に怖い話や心霊動画を見るのがブームだった。
ある日、午後の8時頃。弟と留守番中にインターホンが鳴った。
誰だろうと思いモニターを見たら真っ暗だった。
どうやら玄関からのようだった。

私の家はマンションで、来客はまずエントランスホールのインターホンを鳴らして開けて貰わないと来れない。
なのに来ている。
玄関のインターホンにはカメラは無いため、誰だかわからない。
確認の術は覗き窓しか無かった。
少し渋りつつも恐る恐る覗いた。
しかし、既に誰も居らずその日は終わった。

翌日、同じくらいの時間に玄関のインターホンが鳴った。
昨日のことを言っても馬鹿にしていた母親に見てくるよう言ったが、実際に起こると少し躊躇っていた。
意を決して覗いていたが、既に誰も居なかったらしい。

そしてまた翌日。
今日も来たらどうしようかと怖くなり、8時前から寝てしまおうとベッドに潜っていた。
母親が仕事で家を出た少し後、玄関のインターホンが鳴った。
私の部屋は外の共有廊下側にあり、実質来客(？)はほぼ私の壁一枚向こうに居るような状況だった。
私は怖くて動かず息を潜めていた。

少し経った頃、ﾊﾞﾝｯと私の部屋がある方の壁を外から平手で強めに叩くような音が聞こえた。

それを最後に、この時間にインターホンは鳴らなくなった。

父親は宅配の人だろうと言ったが、宅配の人は他の住人と出会して自動ドアが開いても、届け先の住人が開けない限り入ってこない。
何年も住んでいると出会す回数は多いが、開けたときにエントランスホールのインターホンを鳴らさずに入ってきた人は居なかった。

誰だったのか気にはなるが、もう起こらないで欲しい。